クイーン・メアリー 愛と欲望の王宮 ‐決断‐

シーズン2では脚本のせいで全く魅力的に見えなかったですが、今シーズンではフランソワだけを一途に愛する以前のメアリーが戻ってきたのが嬉しいです。どんな時もフランソワから目を逸らさず、切なそうに愛しそうに見つめる表情が印象的で、一時も無駄にしたくない、彼のどんな姿も記憶に焼き付けたいと願うメアリーの深い愛情が伝わってきたのが良かったです。

フランソワに向ける切なそうな笑顔、カトリーヌと対峙する際の威厳に満ちた佇まい、親友の恋を心配する普通の女の子のような一面…1話の中で様々な表情を見せてくれ、メアリーの芯の強さや賢さ、フランソワへの想いを丁寧に表現していると思います。特にカトリーヌとのシーンがシーズン１の頃とは比べ物にならないくらい迫力が増し、王妃としてのメアリーの成長を感じさせるところが良いですね。

３話でフランソワの代わりにアントワーヌと謁見するシーンが印象的でした。「男の選択の責任を女におしつけないで」と要求を一蹴する姿が王妃としての威厳に満ちていてカッコ良かったです。また堂々と対峙しながらも、絶対にフランソワの異変に気付かれてはいけないという緊張感も感じられ、見ているこちらもハラハラドキドキ感が楽しめたのも良かったです。

フランソワの病気を知ってから表情がますます柔らかく女性らしくなり、彼への愛が全身から溢れ出ているのが分かります。4話で瀕死のフランソワと自分たちの子供について話すシーンが印象的で、子供を授かるという願いはもう絶望的だけど、それでも諦めたくない、フランソワのいない未来を考えたくないというメアリーの思いが今にも泣き出しそうな優しい笑顔から伝わってきて、胸が痛くなりました。

フランソワの遺体に呆然と寄り添って離れない姿が印象的でした。フランソワの血がついたままのドレスにボサボサに乱れた髪、虚ろな眼差しから、現実を受け入れたくない、フランソワの死を認めたくないというメアリーの気持ちが痛いほど伝わってきました。この静かな悲しみ方が突然愛する人を失ったリアリティを感じさせ、メアリーのショックの大きさが強く伝わってくる印象深い演技だったと思います。

カトリーヌを摂政にするために奔走する姿が頼もしくてカッコ良かったです。協議会の票を集めるために悪事を働いていた貴族に「恥知らず！」と毅然とした態度で一喝する姿も王妃としての威厳が感じられて良かったですし、フランソワの願いを絶対に無駄にはしないという強い覚悟が感じられました。

キデオンと対峙する時の王妃らしい威厳に満ちた振る舞いと、カルロスの申し出に戸惑ってカトリーヌに相談する若い娘のような可愛らしさのギャップが良いですね。フランソワを失ったばかりなのに再婚相手を探さなければならない辛さが、カルロスといる時の浮かない表情やフランソワについて語る切なく愛しそうな表情から伝わってきます。未亡人となっても弱さを見せず、フランスとスコットランドのために勇敢にエリザベスに立ち向かう姿が美しくて格好良いです。

カルロスの口封じが出来なかったりローラにナルシスの浮気を告げられなかったり、自分が不利になると分かっていても他人を傷つけられないメアリーの情の深さと、国を守るためなら虚勢を張ったり脅しをかけることも厭わない勇敢な一面を豊かな表情で丁寧に演じていると思います。演技だけでなく容姿も華やかで美しく、どんな衣装や髪型も似合ってしまうので、ヒロインとしての説得力があるところも魅力だと思います。

9話でカルロスの嘘を暴くシーンがカッコ良かったです。「スペインに帰りなさい」とカルロスに命令する姿に男性君主のような強さと威厳が感じられました。あのギデオンすら思わず息を呑んだ花嫁姿の美しさも素晴らしかったです。

フランソワを亡くしたばかりなのに、演技のはずのギデオンとの誘惑作戦でときめいている姿に違和感がありました。意に反してやっている戸惑いや哀しみ、仕方なくという雰囲気がアデレードの演技からは一切感じられず、キスをした時も何だか嬉しそうで完全に恋愛モードの表情に見えてしまい、フランソワへの愛は何だったんだろうと見ていて白けてしまいました。

アガサと親子だと間違われた時の複雑そうな表情が印象的でした。流産したことやフランソワの子供を産むという夢が叶わなかったメアリーの癒えない心の傷を感じることが出来ました。「お父様は味方よ」とアガサを優しく諭す姿は本当の母親のような温かさと包容力があり、メアリーの母性が感じられたのが良かったです。

グリアにスコットランド行きを断られた時の動揺し、大きなショックを受けたような表情がメアリーが置かれている状況を考えると見ていて辛かったです。その直前、久々にグリアに再会した時の笑顔がとても嬉しそうだったので、よりメアリーの孤独感が際立っていたのが良かったです。友達に見放されたというような幼い表情をしていたのも印象的で、王妃としての命令ではなく親友としてただ一緒に来て欲しかっただけなんだなと見ていて切なくなってしまいました。

14話のグリアとの別れのシーンで、必死に涙をこらえて笑顔で見送る姿が切なくて胸が痛かったです。カッスルロイ卿を脱獄させる時は頼もしくて勇敢なクイーンの表情をしていたのに、このシーンでは孤独に押しつぶされそうで心細そうな普通の少女の顔になっていて、守ってあげなきゃという雰囲気が漂っていました。アデレードのこの表情のおかげで、バッシュが一緒にスコットランドに行くと告げるシーンに説得力が生まれたと思います。

兵を率いてカトリーヌのピンチを救いに来るシーンがとてもカッコ良かったです。馬に乗り剣を掲げて登場した時は鳥肌が立ちました。「王太后に罪はない、正しい判断を」と説得する真剣な表情と真っ直ぐな眼差しがメアリーの誠実さとクイーンとしての威厳を感じさせ、兵が攻撃をやめて帰っていく説得力があったのが良かったです。

遭難してドロだらけのボロボロの姿になっても美しくて、気品と威厳が隠せていないところがクイーンらしくて良かったです。身分を偽っていても肖像画すら見たことがない人々にさえ女王だとバレてしまうのも納得の存在感だったと思います。フランソワの仇を見つけた時のゾッとするほど冷たい表情も迫力があって良かったです。

フランソワの仇討ちをするシーンが迫力満点でした。女王なのに殺し方に無駄な動きがなく鮮やかで手慣れ過ぎてたのはちょっと気になりますが、憎しみと怒りに満ちた表情に少し哀しみが混ざっているのが切なく、仇を討ってもフランソワは還って来ないんだなとメアリー自身が強く実感しているように感じました。

スコットランド国民の前で、スコットランド人としての誇りと君主としての信念を演説するシーンがカッコ良かったです。国民を見つめる真っ直ぐな眼差しと、身振り手振りの大きな力強い話し方からメアリーの愛国心と「思いを伝えたい」という強い気持ちが伝わってきました。ラスト、国境で「イングランドを手に入れる」と宣言する時の覚悟を決めたような表情が、エリザベスへの憎しみというよりこの争いを鎮めたいという決意のほうが強く滲んでいたところもメアリーらしくて良かったと思います。

ファイナルシーズンに入り、イングランドを手に入れるという明確な目的が出来たことで、今までよりもさらに強さを全面に出した演技になっていたのが良かったです。自分の美貌も色気も使えるものは何でも利用するというしたたかさと、兄にさえ有無を言わせない威圧感が鋭い眼差しから感じられました。花嫁衣装のまま斧で見張りを襲撃し、馬に乗って自力で逃げる姿は逞しくてカッコ良く、自分で道を切り開く新しいヒロインという印象を強く残したと思います。

フランスにいた時よりもキリっとした緊張感のある表情をしていることが多く、祖国に帰ったのに心休まらない、メアリーの危機的状況が伝わってくるところが良いですね。カトリーヌから送られたドレスを大切そうに見つめる姿やグリアといる時だけ柔らかな表情になるところも、メアリーの孤独の深さを感じさせました。

スコットランドに帰ってからは厳しく威厳のある女王としての顔ばかりでしたが、ギデオンと再会して久しぶりに優しく穏やかな「女性」の顔になっていて、その表情のギャップに切なくなりました。普段はノックスの脅威やイングランドに対抗するために常に気を張った生活をしているのだなと、メアリーの背負っているものの重さと孤独がしっかり伝わったと思います。ギデオンとのロマンチックなラブシーンも美しかったです。

収穫祭でノックスのネガティブキャンペーンを阻止して民たちにパンを配る姿にスカッとしました。意志が強そうなキリっとした表情だけど優しく愛情に満ちた温かい雰囲気を醸し出していて、エリザベスとは違う、民との距離が近いクイーンという印象を強く感じました。火事が起こった時も逃げもせず、顔中汚して必死で水を汲む姿が逞しくも美しく、民たちが「メアリー女王万歳」と心酔するのも納得の立派な君主ぶりを表現していたと思います。

ダーンリー卿に「常に上から目線」と言われていて、確かに政治が絡むと他人に有無を言わせない雰囲気が漂っていますが、それが生まれながらの女王というメアリーの特殊な生い立ちを感じさせて良いと思います。クイーンらしい我の強さはありますが、それを決して高飛車だったり傲慢な感じに見せず、王族の威厳と品格を漂わせているところも素敵です。

ダーンリーが無事だと分かった時の涙を浮かべて彼に抱きつく姿と、パーティーに戻ってイングランドの使者に暗殺者の遺体をさらす時の冷酷な眼差しが印象的でした。両極端な表情ですが、愛する人を殺されたくない、失いたくないというメアリーの強い気持ちが伝わる迫真の演技だったと思います。それほど目の前でフランソワを殺されたショックが大きくてトラウマになっているのだなと、メアリーの心の傷の深さを感じることが出来ました。

ダーンリーの裏切りを知った時の絶望の表情がとても良かったです。泣きながらダーンリーを責める姿は怒りよりも悲しみが強く感じられ、幸せな結婚生活が送りたいと願うメアリーの女性の一面が色濃く出ていてエリザベスとの対比になっていたと思います。

コロコロ変わる表情が魅力的な女優さんなのに、脚本のせいもありますが今回はダーンリーやボズウェルに対して感情的に怒ってばかりで演技が一本調子に見えてしまったのが残念でした。ヒステリックに喚いてばかりでメアリーの心の深い部分が見えないから共感も出来ず、「自分だってルイと堂々と不倫してフランソワを傷つけたのに…」とちょっと冷めた目で見てしまいました。

今までは孤独で表情が硬く、隙を見せないようにという緊張感が全身から溢れていましたが、カトリーヌが来たことで全体的に柔らかくリラックスした雰囲気に変わっていたところが良かったです。2人の絆の強さが本物だと感じられましたし、久しぶりにメアリーの心からの笑顔が見られてホッとした気持ちになれました。シックな婚礼衣裳がよく似合い、絵画のように美しかったです。

ジェームズにスコットランド追放を言い渡すシーンが印象的でした。震える声で必死に涙をこらえているような表情が見ていて辛く、たった一人の家族で心から信頼できる臣下を失うメアリーの不安やジェームズへの贖罪の気持ちが伝わってきて思わず貰い泣きをしてしまいました。耐えきれずにジェームズに抱きつく姿が威厳のある女王ではなく心細さと寂しさを抱えた妹に見えたところも良かったです。

アデレード・ケインさんの美しさがとてつもなく光り輝いて見えます。スコットランド女王としての強さや、時に見せる弱さなどが伝わってきます。「私がスコットランド女王メアリー・スチュアート」といった言葉を宣言するときの彼女からは、女王の品格と気高さが見えてくるような気がします。

これまで何度もダーンリーに失望して拒絶する態度を見せていても「夫婦として分かり合いたい、愛し合いたい」という希望が表情に滲んでいたのですが、今回は常にダーンリーを上から見据えるような眼差しや毅然とした立ち居振る舞い、低く迫力のある台詞回しで彼を完全に見限ったメアリーの覚悟が感じられたのが良かったです。女王然とした態度は美しくてカッコ良く、対等になろうとするダーンリーへ格の違いを見せつけているようで見ていてスカッとしました。

大勢の人が見ているであろう晩餐会でボスウェルにただならぬ視線を送ったり、ダーンリーにキスをされてあからさまに動揺して唇をぬぐったり、策略者につけ込まれるメアリーの脇の甘さを豊かな表情と表現力で丁寧に演じていると思います。ノックスに向ける怒りと軽蔑が込められた冷たい眼差しにもゾッとしました。

部屋に押し入ったダーンリーやルースベン卿に「下がりなさい」と命令する時の女王然とした威厳ある態度がカッコ良かったです。またリッチオの惨殺場面を泣き叫びながら見る表情が今まで見たことがないくらい取り乱した壮絶なものだったことも印象に残りました。直前の強く堂々とした態度とのギャップがあり、メアリーにとってリッチオがどれだけ大切な友人であったか痛いほど伝わってきたのが良かったです。

壮絶な出産シーンがすごかったです。本当に苦しそうで死を覚悟しているのが伝わり、だからこそ無事に生まれた時は心底ホッとしたし、裏で後見人になろうと画策するダーンリーたちのクズさが際立っていたと思います。最近は苦悩する姿が多かったですが、赤ん坊を愛おしげに見つめて抱いている姿は本当に穏やかな幸せそうな顔をしていて、この幸せが永遠に続けば良いのに…と見ていて切ない気持ちになりました。

10代のあどけない少女時代から処刑される中年期まで、一人の女性の半生を美しく気高く見事に演じきったと思います。馬に乗ったり自ら兵を率いたりと単なる綺麗なお姫様で終わらない新しいスタイルのヒロインに体を張って取り組む姿は好感が持てました。どんな衣装や髪型も似合ってしまうその美貌も、出会った男性たちを虜にしてしまうという説得力がありました。ドラマ後半は辛そうな表情が多かったですが、最後にフランソワとの幸せそうな笑顔が見られたのが良かったです。

今シーズンで終了という無茶な脚本の中で本当に良く頑張っていると思う。メークの力を借りているにしても話の進行に連れて精魂消耗してやつれていく様子や絶望続きで今まで以上に感情を激しくあらわにする場面も多い中、細かな心の機微を全身で表現できているのがいい。