ノーサイド・ゲーム

とっても嫌な役だったなぁ、大嫌いでした！
私は個人的に上川隆也が好きなのですが、それを差し引いても金持ちで若い時から親の金をバンバン使い、社長になっても嫌な感じそのまんま。
目を見開き（あ、歌舞伎役者だから得意？）出てくるだけでムカッとさせらせましたね。
まぁそれだけ「上手い」って事で『良かった』を選びました。

待ち合わせに15分以上遅刻しても全く悪びれず終始ニヤついていて、登場しただけで風間のいい加減で信用できなそうな雰囲気が滲み出ていたのがさすがです。どう見ても滝川とは正反対のタイプで学生時代は絶対仲良くなかったと思うのですが、そこが目的のためなら何でも利用する滝川らしさを際立たせていて良かったと思います。

滝川が君嶋に過去を語るシーンで何度か笑い顔が出てきましたが、ただ笑ってるだけなのに小馬鹿にされているような不愉快な気持ちにさせられてイラっとして、「こいつを見返したい」と滝川に火をつける説得力がありました。普段の中村さんはシュッとして品のある方ですが、風間を演じている時は人を品定めして馬鹿にするような嫌らしい性格が顔にも佇まいにも滲み出ていて、下品さを感じさせたところも上手いなあと思いました。

相手を小馬鹿にしたような口調や緊張感のない弛みっぱなしの表情が苦労知らずのボンボン特有の高慢さを感じさせ、見ていると良い感じにイラつかせてくれますね。滝川にも、いまだに彼を自分より下だと思っているような態度で接していて全然警戒していないし、学生時代のあの嫌味な姿から全く中身が成長してなさそうで、必死で努力してのし上がった滝川と対比になっていてキャラとして面白いです。

重役会議で脇坂の不正を証言するシーン、舞台っぽい大芝居ではありましたが迫力があってパッとその場の空気を変えるというか、「ここからどんでん返しが始まるぞ」というワクワク感を高まらせてくれたと思います。声に力があってよく響き、脇坂に絶対言い逃れさせない、糾弾してやるという強い意志と執念を感じました。嫌味な役で好きではなかったですが、ドヤ顔で会議室に登場した時のスカッと感は最高でした。

この人をドラマで見たのは初めてでした。初めて見て思ったのは役になり切った演技をしている、もう少し言いますと視聴者の期待を裏切らない素振り、表情のできる人だと思いました。ベテランだからかもしれませんが他のベテランと比較してもやはり一つ二つ上の演技を自然にできる役者だと思いました。

滝川との宴席の場面は、毎回、風間の個性を視聴者に印象付ける演技を見せてくれていると思う。滝川との１回目の宴席で遅れて来るところでのセリフ、２回目の滝川から買収に関し「お前の方から要求はないのか」に対するセリフと演技は、はまり役と言える。滝川との学生時代の話はまだ深堀されていないが、恐らく、君嶋と柴門のように学生時代の過去が暴かれると思う。その時の両者の演技に期待している。滝川は今のポーカーフェースで気取っているとは思えないが、貧乏時代、風間がどう接していたのかは短くて良いのでワンシーン欲しい。加えて、白水商船の事故の件をもみ消すどす黒さをどう演じるかも楽しみだ。

鼻持ちならない、憎たらしい笑顔がはまりまくっていた。しかもご本人歌舞伎界の大物なのに、やりこめられると、キレッキレになるところなど、小物感の出し方も上手。池井戸作品には欠かせない、かっこ悪い系の嫌な奴の役柄を、パーフェクトに演じ切っていて感服。