ダイイング・アイ

東野圭吾の珍しくSFチックな作品。
初っぱなからショッキングなシーンから始まるから訳が分からないままあれよあれよと物語が進んでいく感じがドラマにもよく出ている。
三浦春馬さんが以前よりぐっと落ち着いた感じがあってミステリーの中の１本の軸のようだ。
彼を取り巻く人たちがみんな実に怪しい。
なので原作ファンとしてはなかなかいいじゃないかと思った。
高橋メアリージュンさんは役どころだから仕方がないんだけどややわざとらしさが浮いて見えてしまいちょっと残念。

慎介の監禁や瑠璃子の正体、木内と瑠璃子のつながりが明らかになるなど３話も怒涛の展開で非常に見ごたえがありました。江島の本性と成美の逃亡シーンも怖くて、終始ハラハラドキドキの連続でした。ゾクゾクと背筋が寒くなるような、観終わったあともジワジワと恐怖が広がっていく独特の世界観がクセになります。

シンスケが起こした交通事故のもう一人の加害者の婚約者の事がわかる下りが唐突すぎたように思います。バーで見せられた写真もそれほど瑠璃子(ミナエ)には似ていなかったし。ミステリーはさすがに面白いけど、そこをもう少しわかりやすくして欲しかったように思います。刑事役の木村祐一さん、いい味出しているけど標準語がなんかぎこちないというか、わざとらしく聞こえてしまうのは残念です。ドラマとしてはスリリングで展開も良く、一瞬でも逃すとストーリーがわからなくなる、クライマックスに迫ってきてなおさらそういう感じのある回です。

高橋メアリージュン演じる謎の女だけじゃなくて、三浦春馬演じる主人公の周りの人間が、彼女も含めて全員怪しいのが、過去の交通事故に絡んでいるのだろうけど、謎の女とどういう繋がりなのか。全く別の事を隠してるのか？彼女が部屋の隅々まで探してないないと言っていたのは貯金通帳じゃなかった？なら何だろう？主人公はある意味無垢な感じ。だから、主人公の知らない、気づかない所で動くドロドロした物がまた面白い、スリル感を出しているのかな、と思う。

命狙われてたんだから部屋の鍵はちゃんとかけなさいよとか、木内はどうして慎介の家を知ってるんだとか、色々とツッコミ所はあるのですが、毎回スリリングな展開で見逃せないドラマです。5話は事故の真相や瑠璃子の正体が明らかになり、最終回直前に一気にストーリーが進んで見ごたえがありました。ミドリがどうしてあんな風になってしまったのか、彼女の目的は何なのかが気になり過ぎて、最終回が待ち遠しいです。

5話までの展開がスピーディーだったので、最終回はちょっと間延びした感がありましたが面白かったです。一件の交通事故によって加害者も被害者も遺族も皆人生が一変してしまうんだなと、当り前のことなんだけど改めて実感してゾッとしました。お金を盗んだ成美は仕方ないとして、たまたまマンションにいただけの榎木まで殺害されてしまうのは気の毒でした。東野作品らしく謎を残さず全てすっきりと明らかになる結末でしたが、何とも後味の悪い、重たい気持ちになるドラマでした。

慎介が誰かに見張られているようなシーンが何度もあったり、マネキンの目が動いたり、ドラマのテーマである「目」にフォーカスした演出がより怖さや怪しさを際立たせていてゾクっとします。事故のもう一人の加害者の存在も明らかになり、江島たちの嘘が少しずつ表だってきたと思いきや、幽霊騒動や成美の失踪という新たな謎も出てきて話が複雑に展開していき、終始重苦しい雰囲気なのに飽きることなく見入ってしまいます。

原作の暗く陰鬱な独特の空気感をよく醸し出していると思います。冒頭の事故のシーンはミステリーと言うよりホラーちっくで、高橋さんの熱演もあって中々ショッキングで印象強かったです。ストーリー展開も早いし、皆が怪しくて嘘をついているようで、台詞がないシーンでも意味深な表情を浮かべているのでよそ見してる暇がない見ごたえのあるドラマだと思います。

全６話なのでストーリー展開が早く見ていて飽きません。マネキンだらけのアトリエや、尋常じゃない広さの生活感のないマンション、鎖での監禁など、非現実的で不気味な演出がグッとドラマの世界観に引き込んでくれます。全体的に薄暗い雰囲気の映像ですが、瑠璃子の真っ赤な口紅やオレンジの間接照明に瑠璃色の花など、箇所箇所に映る鮮やかな色合いが映えて美しいところもこのドラマの魅力だと思います。