ラジエーションハウス

「患者が私を待っている」と格好良く到着したのにもう治療が終わってたとか、美女に「あのじじい」ってディすられたりとか、腕も良くてそれなりの地位にいるのにどこか残念なキャラがとても似合っていて、五十嵐たちと対立する役どころだけど憎めない良いキャラですね。若手、中堅どころの役者が多い中、浅野さんのコミカルだけど緊張感のある演技は場面をピリっと引き締めていて、良いアクセントになっていると思います。

小野寺たちには高圧的だけど権力者にはヘコヘコしていて、態度が分かりやすくガラッと変わるところが漫画っぽくて面白いですし鏑木の小者感が際立っていると思います。金田会長に検査の遅れを伝える時の誤魔化したような笑顔と恐る恐る話しかける感じが何とも情けなくて、でもコミカルさもあって、単なる嫌な奴になっていなかったのがさすが上手いなと感じました。

ゴルフの素振りをする安野を「ナイスショット！」とおだてたり、辻村教授に検査を中止しろと言われるとすぐに受け入れたり、相変わらずの権力者に弱い小者っぷりが良かったです。このドラマは技師にスポットライトを当てる代わりに医師が俺様で技師をないがしろにしているように描かれていて、鏑木も高圧的な態度や発言をすることがありますが、声が高めで笑顔がチャーミングな浅野さんが演じると相手を馬鹿にしたような台詞もちょっとマイルドに聞こえるというか、見ていてさほど嫌な気持ちにならないところも良いと思います。

マスコミの前で嬉しそうにちょっとはにかんだり、おだてられて謙遜しつつも満更でもなさそうな表情を一瞬浮かべたり、台詞にはなくても表情の変化だけで鏑木の出たがりでお調子者な性格やちょっと無責任で器が小さい一面をしっかり表現していたと思います。ドラマでの立ち位置的にはヒール役っぽいのに、そのダメさがチャーミングで、どこか憎めない不思議な魅力がありました。

ネチネチした胡麻すり上司が実際にいたら、相当イライラします。でも浅野さんが演じると、憎めない突っ込みどころ満載の上司になるので、観ていてイライラしません。コメディドラマじゃないのに自然とコミカルに演じ、かつ、医療ドラマの世界観を崩さないところが、「浅野さん、さすが！」と思います。

院長に辞表をあっさり受理されてしまった時のちょっと不満げで物足りなそうな表情が鏑木の自己評価の高さを表していて良かったです。きっと引き止めて貰えると思っていたんだろうな。技師を軽視していて嫌味な感じだけど、こういう人間味のあるところが魅力的で憎めません。また五十嵐たちに光くんの手術が出来ることを伝えるシーンが印象的で、迷いのないはっきりとした口調が頼もしく、鏑木がこれまで放射線科医として積んできた経験の豊富さと優秀さが感じられ、とても格好良かったです。

腕も良くてそれなりの地位にいるのに、家族にも技師にもあまり尊敬されていない残念な感じが似合っていました。口先を少し尖らせて喋る癖や早口な台詞まわしが鏑木の嫌味さやネチッこさ、屁理屈や言い訳ばかりしそうな人間の小ささを感じさせたのも良かったです。

放射線科のいちばんえらい人なのに検査の予定が詰まってるからって怒鳴ったり、一度自分が診断したら再検査するのを反対したり、融通きかない医師って感じ。でもそういうキャラが似合ってて、憎めない。なんだかんだ言いつつ部下の意見も尊重するあたり、真面目で誠実そう。