海に眠るダイヤモンド

このドラマですごく印象が変わりました。キリシタンという一つの核を持っているような百合子がとても強くて優しくてすごく魅力的でした。朝子のことを誰よりも思っているからこその鉄平への怒り。賢将さんとの夫婦もしっくりきてました。

鉄平とリナのことを「一生許さない」と朝子以上に怒っている姿や、赦しなんてくそくらえって言い放つ姿が百合子らしくて、朝子の傍にこんなふうに心を寄せて怒ってくれる人がいてくれて良かったなって思いました。大切なネックレスを朝子につけてあげる時の穏やかな表情も、優しく朝子の背中を擦ってあげるのも、ドラマ序盤からは考えられない母性のような温かさや包容力を感じさせ、賢将の存在と年月の経過が彼女の呪縛を解いてくれたんだなあって伝わってきたのも良かったです。

朝子に妊娠をお祝いされた時の安堵や嬉しさ、不安が滲む何とも言えない笑顔がとても良かったです。きっと日々、新しい命を愛しく思って喜んだり、被爆者として不安に思ったりを繰り返しているんだろうなと百合子の複雑な思いが伝わってきました。「石炭が出なければ全員解散」って賢将と全く同じことを口にしてるのも似た者夫婦って感じでほっこりしました。

同じような嫌味でも、以前と今とでは全然ニュアンスが違って聞こえるのがすごい。棘がなくておどけたような愛嬌があって、声のトーンも表情も穏やかで優しくて、詳しい描写はなかったけど賢将との結婚が良い方向に導いてくれたんだな、今とても幸せなんだろうなって伝わってきたのが良かったです。

自分は被爆者だから結婚できるはずがない、離婚できないカトリック信者である私と結婚するなんて軽々しく言わないでという強い思いから賢将の言葉に徐々にほぐれていく百合子、最後は賢将と共に歩んでいくことを了承して笑顔に。百合子の強さがとても素敵で賢将といい夫婦になっていくんだろうなと想像するだけで嬉しくなった。

賢将からプロポーズされるシーン、彼の深い想いを受け止めて涙する姿に貰い泣きしてしまいました。静かに泣くのではなく「私の人生手強いわよ」って返す強気なところも百合子らしかったし、賢将の前では強さも弱さも取り繕うことなく出せるんだなあと、言葉では言い表せない二人だけの強くて深い絆が感じられたのも良かったです。

賢将と百合子は恋愛や友情を超えたなにかを感じます。幼馴染だけどそれだけじゃない、一島一家という島民の暮らしの中で培った濃い関係のようなきがします。どちらが元気がなくてもどちらかが寄り添ってきたのだろう。おしゃべりな百合子が静かに寄り添う場面がとてもよかったです。

賢将との関係性が素敵。恋愛感情ではなく、友情よりもっと深くて、温かくて切ない二人にしか分からない絆が伝わってくる演技が素晴らしかったです。賢将が悪く言われるとすぐ言い返す負けん気の強さも、誤解を解こうとする真っすぐさも、孤独な賢将にそっと寄り添う姿も、百合子の優しさや大きさが感じられて良かったと思います。

今まで朝子に意地悪していた理由が分かった時、その態度がいじらしく思えるほどそうだったのかーと納得できた。和尚へ語る原爆の話に胸を鷲掴みにされた。浦上がえらばれたなんてそんな言葉で片付けないでほしいというあの雲の下にいたから出る言葉が重く、まだ終わっていないと叫ぶ百合子。忘れちゃいけない歴史の傷を思い起こさせてくれました。

朝子と和解するシーンがすごく良かった。呪縛から解き放たれたような穏やかな表情や、棘のなくなった口調や空気感、鏡越しに朝子と笑い合う晴れやかな笑顔、台詞以上に百合子の心情が伝わる表現力が素晴らしくて見入ってしまいました。長年朝子に意地悪ばかり言ってキツくあたってきたけど、わだかまりの原因となった核心は決して口しないところも温かくて切なかったです。

嫌味っぽかったり皮肉めいてたり、苛立ったり、朝子のことになると途端に意地悪さ全開になるところが気になる。ただ単に嫌い、気に入らないっていう子どもっぽさとは違う、もっと複雑な因縁めいたものを感じさせるのも上手いなと思います。オーディションのくだりで「自信がないんだろ」と揶揄う賢将にムキなってデコピンする姿も、百合子の気の強さやプライドの高さが感じられて良かったです。

自由奔放で華やかに見えるけど、母との溝や自己肯定感の低さ、賢将や朝子への複雑な感情、色んなものを一人で抱えていっぱいいっぱいになってしまっている百合子の心情を、細かな表情や声音の変化で繊細に丁寧に表現していたと思います。鉄平に本音をさらけ出しつつ、顔を背けて泣き顔は絶対見せないところも、百合子の負けん気の強さとプライドを感じさせて良かったです。

島から一歩も出たことがない素朴な朝子と違い華やかで都会を知ってる人になっている。雰囲気から違っていて島では異質なのもよかった。だけど中身はツンケンしてなくてリナとも壁を作らずいい人で島の素朴さが残っているのかなと嬉しくなった。

どこか古風な印象のある美人さんなので、こういう時代ものがハマりますね。朝子に「鉄平が帰るって言うから」とわざと含みのある口調で言ってみたり、チヤホヤされるリナにあからさまに不機嫌になって拗ねたり、百合子のちょっと意地悪で気位が高い性格がちょこちょこ垣間見れるところも良かったです。島を馬鹿にされて悔し涙を流す姿も、端島とそこで生きる人たちを大切に、誇りに思う気持ちが伝わってきてグッとくるものがありました。