あんぱん

復員して戻ってきた崇を見つけた時のリアクションがすごく良かった。咄嗟に地面に正座をしてお辞儀をしたのはお国のために命懸けで戦ってきた人への敬意と、奇跡に感謝したものだと思った。その後に抱きしめて喜ぶのも良かったなー。

寛先生に叱られた話さえのろけだったという千代子がかわいい。独りよがりに話していたかと思えば同じ立場の羽多子さんの話にハッとしたり、お酒が入ってる設定だから感情の揺れが大きくなり表情も普段よりバリエーションが多い。芸が細かいね。

ゆったりと重たげな佇まいや泣き腫らしたような遠い眼差し、乱れた髪、やつれたような力ない笑み、登場しただけで千代子の憔悴ぶりや深い悲しみが伝わってきて胸が苦しくなりました。寛に怒りながらも愛しげで寂しげな笑みを浮かべて羽多子と献杯するシーンも切なくて、寛への愛情が目一杯伝わってきて素晴らしかったです。

健ちゃんをもてなすシーン、笑顔も口調も社交辞令ではなく心からのものだって感じられたのが良かった。嵩が家に友達を連れてきたこと、学校生活を楽しんでることが嬉しくてホッとしたんだろうなあって親心が伝わってきて、その愛情深さと大きさにグッとくるものがありました。

崇のことも千尋のことも我が子のように心配している千代子さん。愛情深いこの人がいたから2人が不憫に見えることはなかったんだなと気づきました。受験に失敗したらまた医者を目指してくれないかとぽろっと言っちゃうのも人間らしくて良かったです。

ドラマや映画の中の夫婦役を見ていると似合ってないなと感じる時があるのですが、このドラマの戸田さんと竹野内さんは夫婦しっくり合ってると思います。
夫婦の長い間一緒に過ごしてきた年輪という雰囲気も演技上大事だと思っていますので。

登美子のもとから帰ってきた嵩を「心配しましたよ」って労わるように見つめて身体中を優しく撫でてあげる姿が、千代子の愛情深く温かい人柄を感じさせました。嵩の境遇は不憫で胸が痛くなることが多いけど、養子の千尋と同じように嵩にも愛情を持って接する千代子の姿を見ると少しホッとします。お金を払う時にそっと添えられた手や、きちんと両手を揃えて嵩に手紙を渡す仕草など、何気ない日常の所作に品があって育ちの良さが滲むところも良かったです。

この人が実母の登美子をやった方が良かったと思うけどなー。でも千代子も素敵です。小さなタカシに優しくここにいてくださいと敬語で話しかけるシーンがとても良かった。ほっとできる笑顔ながら、微妙にあけた座り位置から二人の遠慮が見えた。