警部補ダイマジン

毎回登場するアクションシーンはスピーディーでキレがあり、さすがの迫力で素晴らしかったですが、結局台場がどういう人物なのかよく分からないまま終わってしまったのが残念。大声で喚いてる姿は目に浮かぶけど、人柄とか私刑について本心でどう思ってるかなど、細かな心理描写がなかったせいもあるけど、生田さんならもっと深みのある芝居が出来そうなのに、一人だけ人物像がフワフワ・モヤモヤしたまま最終回を迎えてしまって勿体ないなと思ってしまいました。

内藤とのアクションシーンが迫力あって見応えがありました。動きが軽やかで無駄がなく、程よく力の抜けた感じも戦い慣れしてる余裕を感じさせて格好良かったです。44メンバーを射殺してしまった七夕を助けるシーンも、自首させるなんて考えは一切頭にない迷いのない動きが、すでに人を殺している台場らしい肝の据わりっぷりと覚悟を感じさせました。

何処か楽しげに、まるで遊んでいるかのように何度も市川を階段から落とす姿や、駆けつけた警官が「やり過ぎですよ」と苦言を呈するほど暴漢をボコボコにしてしまうところが「暴力装置」らしかったです。正義感からくるものだと分かってるけど、歯止めが利かず度が過ぎてしまう危うさや、人殺しを隠蔽してもらってるとは思えない無防備で隙だらけなところ、平安とのちょっとコミカルなやりとりなど、シリアスになり過ぎず良くも悪くも人間っぽさがあるところも生田さんならではのお芝居の魅力だなと思います。

ドアが開いた瞬間、犯人に消火器ぶっ放して殴り倒すっていう流れるようにスムーズな手口が「暴力装置」「暴力のスペシャリスト」と呼ばれる説得力を感じさせました。七夕に「憧れです」と言われた時の満更でもなさそうな表情や、平安に苛立って「ぶっ殺す」を連呼して歩く姿など、たまに見せるコミカルなところも人間味があって良いと思います。私刑を扱ったドラマって「何様のつもりなんだよ」ってモヤっとすることが多いけど、ここまで人殺しに対して躊躇いも罪悪感も感じていない姿を見せられるといっそ清々しくて、そういうモヤモヤがどうでも良くなってしまいます。

源仲章はよかったんですけど、この台場というキャラはどうも生田さんには似合っていない印象です。まず台場の人物設定が薄っぺらい。正義感であれ、殺人を犯すような人間がいつも真っ白な目立つコートを着ているというのは、彼なりの正義があるという象徴として、それを暗示しているのでしょうが、逆に暗躍する殺人犯がそんなわかりやすい自己主張をしたら、捕まりやすいことくらい刑事ならわかるわけで、そういうリアリティを薄くしてしまう効果もある。だからこそ、台場はもっとアウトローで、巧妙にバイオレンスを駆使する黒さがあれば、衣装など小道具とのバランスがとれるのに、どこかお人好しで常識が残っている。もちろんそれは平安との対比のためでしょうが、そのせいで中途半端になっている面もある。そして正義とは反面で残酷なものだからこそ、たとえば相棒の右京さんみたいに、ある種の残酷さが必要だと思うのだけど、台場にはそういう奥行が感じられない。生田さんの芝居も中途半端。バイオレンスなシーンはもっと感情的でいい。まあ個人的に三池さんの演出が好きではないからかも知れないけれど、台場のキャラは首を傾げることが多いですね。

本当に刑事さん？って思うほどすぐに足がつきそうな私刑をするのも台場さんならあり得る。どうにかできると思っているフシもあるし元々細かい仕事ができそうにないタイプと見た。それを衣装や髪型の力を借りながらも荒っぽい口調や態度で表している。向井さんと真逆なキャラが活きていると思う。

何の躊躇いもなく天羽を手にかける姿や、その後、何食わぬ顔で捜査に参加して「自殺」に誘導しようとするしらじらしさ、肝が据わってるかと思えば防犯カメラ映像のくだりでは目が泳いだりソワソワした表情になるなど人間味もあって、ダークさと親近感を併せ持つ不思議な魅力があってとても良かったと思います。天羽の悪行について語る時の荒ぶった口調や怒りに燃える目、苛立たし気に唇を噛みしめる姿も台場なりの強い正義感が感じられて良かったと思います。ボサボサ頭でヨレヨレのコート姿でも主役らしいオーラが感じられるところもさすがです。