くるり～誰が私と恋をした？～

まことに「誰にどんな指輪を作りたいか想定してやってみると良い」とアドバイスするシーンが良かった。まことの作業音の変化や浮かない表情から、彼女のモヤモヤを察して気遣っているような表情や声音が印象的で、弟子と師匠という関係だけでなく、まこと自身のことも気に掛けて温かく見守っているのが伝わってきました。出番は多くないけど、毎回確かな演技と存在感で若手が多めのドラマをしっかり締めて質を高めているところもさすがだなと感じました。

実に自然で、本当にこういう店長さんっていそうな気がします。踏みこみすぎず、突き放しすぎず、人を育てるのはこういう距離感が必要なのだろうと思わせるし、にじみ出るセンスの良さみたいなものも感じさせます。若い役者さんが多いドラマの中で、ともさかさんと片平さんというベテラン勢が、要所でバランスをとる感じで、とても良いキャスティングだったのではないでしょうか。というか、なんとかキャスティングでもったとドラマとも言えますね。

石の色のことで早瀬と言い合いをするシーン、ムキになって子供の喧嘩みたいになってたり「映えって何よ」ってツッコんだり、ちょっとアドリブは言ってる？って感じの雰囲気が、普段の頼れる師匠の姿とギャップがあって可愛らしかったです。プロの職人らしい絶対に譲れない拘りの強さやプライドが感じられたのも格好良かったです。

まことからネックレスを外したと報告を受ける時の反応が杏璃さんらしくて良かったです。余計な詮索や言葉はなく、まことにも多くは語らせず、ただ「うん」と笑顔で頷くだけだったけど、公太郎とのことや、まことが前にまた一歩進めたこと、ネックレスを外すに至った心情の変化など、全て察して静かに受け止める包容力が感じられたのも良かったし、師匠としてだけではなく、人生の先輩としてまことのことを温かく見守っているのが伝わってきたのも良かったです。

「今の彼女を信じて踏み込んでみたら？」とそっと公太郎の背中を押すシーンが素敵でした。記憶喪失後のまことを男性陣たちよりも長い時間、日々見守ってきた杏璃だからこその説得力があり、その口調や態度に押しつけがましさが全く無くて、お節介過ぎない適度な距離感があるところも良かったと思います。

まことに公太郎の過去について語る時の口調や表情に、終始何処か後ろめたそうで申し訳なさそうな雰囲気が漂っているところが杏璃の人柄を感じさせて良かった。弟のせいで…という責任や贖罪の気持ちを１０年経った今も持ち続けているんだなと伝わってきました。恋人と別れたことをちょっと気まずそうに報告する姿や、弟の結婚式で見せた幸せそうな笑顔など、今まで見たことない色んな表情が見られたのも新鮮で良かったです。

楽しそうに接客をするまことを微笑ましげに見守る姿が良かったです。細かく指導したり指示を出すわけじゃないけど、ちゃんと師匠としてまことのことを見ていて少しの成長も見逃さずに気付いてあげているのが伝わってくる。親友と何を話すかというくだりで、アクセサリー作りや加工術について熱く語り出す姿も、その熱弁をばっさりカットされちゃうところも、普段の頼もしくて格好良い姿とギャップがあってチャーミングで良かったです。

まことのことを見守る優しい眼差しと程よい距離感が素敵。会話しながらのラッピング作業や、お客様のサイズを確認する時の手つきや接客トークもすごく自然で小慣れていて、本当の店員さんみたいなリアリティが感じられるところも良かった。若いキャストが多い中、杏璃さんの醸し出す温かみのある落ち着いた雰囲気はドラマの良いアクセントになっていると思います。

手取り足取り教えるわけじゃないけど、ちゃんとまことの「音」を聴いて作業の状態やメンタル、疲労具合などを把握しているところがプロって感じで良かった。作業姿もスムーズで手慣れた感があって格好良いし、喜ぶお客様を見て自分のことのように嬉しそうな笑みを浮かべる姿も、この仕事への愛情ややりがいを感じさせて良かったと思います。