私の知らない私

芽衣と向き合って本音を語り合うシーン、結果的に実行してないとはいえ殺意はあったのだから謝罪の言葉は欲しかったけど、哀しみを纏いつつもこれまでとは違う穏やかさがあって、翠の心情の確かな変化が感じ取れたのが良かったです。それが咄嗟に西島から芽衣を庇う行動に繋がっていて、唐突な感じに見えなかったのも良かったと思います。

誰も信じなくて、何を言っても響かなくてお酒に逃げていて、翠一人だけ立ち止まったままな感じが見ていてしんどかったです。全く共感は出来ないし腹も立つし、同情とか可哀想っていう気持ちとも違うけど、でも何とか救われて欲しいなと願わずにいられない、孤独や哀しさが滲む雰囲気も良かったです。

「そういうとこ、蒼馬にそっくり」と龍之介を見つめる眼差しや口調に懐かしさや愛しさが滲んでいるのが切なかったです。こういう何気ない視線や表情からたびたび蒼馬への深い愛情が伝わってきて、やってること最低で歪みまくってるけど、ただのヤバい人で片付けられない儚さや苦しさを感じさせるところも良いと思います。

芽衣から全て奪ったのに表情が優れず苛立ってお酒に逃げる姿や「まだ奪えるものがあるじゃない」と龍之介の存在に気付いた時の生き生きとした嬉しそうな表情、芽衣への憎しみだけが生きるエネルギーなんだなって伝わってくる演技が良かったです。過去について語る時、ふと表情に憎しみとは違う寂しさや懐かしさが滲むところも、芽衣のお姉ちゃんになりたかったことや大好きだった気持ちは本物だったんだろうなって感じさせて切なくなります。

空港でのシーン、何を言っても通じないし響かない、もうどうしようもないくらい芽衣への憎悪が根深いものなんだなと改めて思い知らされました。あまりに自信たっぷりだから、もしかして本当に芽衣が殺したのかな？って疑念を抱いてしまうくらい。蒼馬が生きている時の表情がとても穏やかで幸せそうで、余計に今の姿が悲しく切なく感じるところも良いと思います。

スピーチがとても上手だなと思いました。人に聞きやすい声と間でしっかりと言葉を届ける、見本のようで素晴らしかった。お父さんのこともしっかり褒めていたし非の打ち所がない立派なお嬢さんだった。派手な下着が見えていたのも自然だったのであれが策略だったとは！ととても驚いた。

父親に復讐するシーン、スカッとしました。父親から解放された時の清々しそうな笑顔や今までで一番ってくらいテンション高めな様子で佐竹に拡散動画を見せる姿も、父親の存在が翠にとってどれほど重く強い呪縛だったのかが感じられて良かったです。佐竹から西島の本性を訊かされた時の「最高じゃん」っていう爆笑も、もう佐竹の手に負えないくらい芽衣への恨みで心が侵食されているのが伝わってきてゾッとしました。

「芽衣のお姉ちゃんになりたかった」と涙を流す姿が印象的でした。母と自分と、芽衣親子と4人で新たに家族になって幸せに過ごせるかもって、それを心の支えにして地獄みたいな日々を過ごしていたのかなあって伝わってきて胸が苦しかったです。佐竹に芽衣への憎しみを焚きつけられて徐々に表情が変わっていくところも、佐竹にマインドコントロールされてるかもという疑惑に説得力を持たせていて良かったです。

菊の花束を受け取った時の怪訝そうな表情や、それが父親からだと分かった時の異常な怯えっぷり、佐竹に助けを求める時の切羽詰まった声、いつも余裕がある翠とは別人のような姿が印象的で、彼女にとって父親がどれだけ怖ろしい存在なのか伝わってきたのが良かったです。やってること尋常じゃないし、表情も言動も狂気じみていて怖いけど、何処か孤独や悲しさも感じさせて、単なるヤバい人になっていないところも良いと思います。

学生時代の翠は芽衣の回想シーンとは印象が違うところが良かった。芽衣の目線じゃない翠の背負うものの大きさがそうさせるのだろう。芽衣と同じ願いを叶えてくれる像を持っているのに切実さが違って二人の置かれている状況が違いすぎて泣けてきた。

今のところ逆恨みとしか思えないけど、高校時代の回想シーンを見ていると、憧れの存在である表の顔とは違う、不安や恐れを抱えた表情や芽衣を自分に重ねていた姿が辛くて切なくて、やりきれない気持ちになってくる。芽衣が「お父さんが助かりますように」ってお願いし始めた時の絶望や虚しさ、妬ましさが入り混じった何とも言えない表情も、今の芽衣に向ける憎悪の種が垣間見れたようでとても良かったと思います。

この人に睨まれたら生きていけないだろうなという強い睨みがすごい。まだまだ明かされていない強い恨みがありそうな目。冷たそうに見えて近づき難いのに急に親身になるギャップに吸引力がある。人を操る魔術が使えそうだ。

芽衣に本性がバレても全く動じず、むしろそれすら楽しんでるような余裕な姿が翠の底の知れない怖さを感じさせました。普段通りの優しく穏やかな口調なのに、芽衣への強い憎しみが滲んでいるのも良かった。下手するとドロドロ昼ドラみたいになりそうな役だけど、品と不気味さ、怖ろしさの塩梅が絶妙でコントみたいにならないところも良いと思います。

芽衣と接する時の態度がやたら意味深というか、口調も穏やかで笑みも浮かべてるけど、親友同士の親しみや情が全く感じられないところが良い感じに怖くて上手いなと思いました。静かな演技なんだけど、何かやらかすんじゃないかっていう危うさとハラハラ感を常に纏っているところも良かったです。

高校時代の回想でもテンションの高い感じじゃなかったけど、メイの結婚式に白いワンピースで現れた翠はすごく挑戦的な目をしていてとても気になった。彼女が何を隠しているのか不穏な雰囲気にとても惹かれる。目力がいいね！