天国と地獄～サイコな２人～

伏線を縦横に張り巡らした今作の中で、最大の布石でした。怪しいといえば全員が怪しかった中でまさかの「東朔也」冒頭のテロップで「永遠の15分」と出て、ん？と思ったら「お前が15分先に生まれていたら！お前の人生は、俺のものだったかもしれないんだ！」血を吐くような叫びが心に刺さりました。それでも、SDカードにすっかりやつれ果てながらも自白を残していた姿。きっと日高満さんに引き取られていれば、陽斗と同じ様に努力が報われる人生だったんだろう。やるせない姿は私にも重なり、他人事とは思えない。

最終回は自白映像だけの出演でしたが、痩せこけた頬やギョロっとした目、喋るのも苦しそうな息遣いが印象的で、死期が迫っていることを覚悟しているような壮絶さを感じさせました。自嘲気味に笑う姿や、全てを諦めてしまったような暗く沈んだ眼差しに陰と孤独、哀しさを感じさせ、河原が読みあげていた壮絶な人生を表情や佇まいだけで彷彿とさせるところもさすがでした。

メイクの影響もあると思いますが、1話の頃より明らかに痩せてやつれていて役者魂を感じました。その姿で彩子に「こいつは悪くない」と必死で縋るから、日高を巻き込んでしまったことへの後悔や最後の力を振り絞って弟を守ろうとする兄の愛がより強く感じられてグッときました。人の良さそうな笑顔と人生を諦めたような寂しげな雰囲気のせいか、猟奇殺人鬼なんだけど、何故か怖いというより哀しい人という印象を受けるところも良かったと思います。

師匠がまさか東さんだったとは驚きです。すごく明るくてひょうひょうとしていて、お掃除の仕事についてもプライドをもってやっているんだろうなと思っていたので、とんでもないお掃除をやっていたとは衝撃です。でもまだ何か裏があるような気もしています。余命わずかだからこそ何かを成し遂げたい気持ちになったのかもしれませんね。

殺人鬼かも…というフィルターもあるせいか、明るく気さくに振舞っていても何を考えているか分からない怖さがありますね。陸を見つめる優しい笑顔は本物に見えるし、でもふと見せる真顔や鋭い視線は狂気じみてるようにも見えるし、「自分なんていてもいなくても一緒」と悟ったような寂しさも背負っていて、東の色んな側面を繊細に表現しているところがとても良いと思います。

ドラマのキーマンの「東朔也」ではないかという流れになってきた、陸の師匠。どうも重い病気を患ってるっぽくて余命わずか？明るいキャラなんだけど、どこか影を背負っていて怪しげな湯浅。現場に来たけど、殺さずに帰っていったのはこの人なんだろうか。陸があまり踏み込むと危険なんじゃないかと思わされる、良い人なのか悪人なのか、どこまでも謎の人物。

単なる人当たりが良くて面倒見の良い人ではなく、何かを抱えていそうな陰を感じさせる演技が上手いです。特に7話で陸にどんな人生を送ってきたのかと訊かれた時の一瞬の真顔が、普段の気さくな笑顔とギャップがあってゾクっとさせられました。以前陸に語っていた父親のことを放っておけなかったという台詞も、「お金をもらうとお父さんが嫌がるから…」と父を気遣っていた少年時代の東の姿にダブるところがあり、ドラマの重要なキーマンになっていると思います。

陸にとっての「師匠」なんですが、なんか怪しい感じがします。
彩子の事を「二重人格か？」なんて言ったり、陸が「４」の字を一心不乱に消していた時も現場に現れて、なにかと関わってきますね。
笑顔の裏に、なにか隠していそうな気がします。

ただの気の良い先輩かと思いきや、ジョークとは言ってたけど陸に余命3か月と告げたり、他人名義で部屋を借りていたり、父親に苦労させられた話など、背景が見えてくると何だか怪しく見えてきちゃいました。人生悟ったような感じだけど、どこか寂しげで、でも優しくて、単なる良い人じゃないかも…と思わせる雰囲気を醸し出しているのが上手いです。日高が薬を拾って「時間がない」と呟くシーンと何か関係があるのかなあ？5話で一気に気になる存在になりました。