刑事ルーサー

とても色っぽい女優だと思った。
よく計算された演技で眼力が凄い。

久々の登場でしたが、「ジョンのためなら何でもする」「ジョンの大切な人は守る」という部分が全くブレていなくてホッとしました。このドラマってとにかくジョンが裏切られて大切な人が殺されて…の繰り返しなので、ジョンのことを決して裏切らないアリスの存在は貴重です。スタンガン持ったトムから逃げる時も丸腰なのに全然慌てず、むしろスリルを楽しんでいるような表情をしていてサイコパスっぷりも健在でしたし、取り乱すメアリーを落ち着かせたり、逃げる時には先に行かせたり、とにかく頼もしくて大活躍で格好良かったです。

下手というよりイメージがちょっと合わない感じです。

警察病院を脱走して勝手にジョンの家に侵入しているくらいではもう驚かなくなりました。それくらい「アリスなら何でもやりかねない」という強烈なキャラクターの印象付けに成功していますね。上目遣いや口角をギュッと上げた笑顔に色気と狂気が感じられて、表現力・ルックス共にハマリ役だと思います。ジョンを旅に誘うシーンで最初は楽しげだったのに、だんだん彼の心が読めてきて笑顔が消えていく様がとても悲しげだったのも印象的で、サイコパスのアリスにこんな表情をさせるくらい彼女にとってジョンは特別で愛すべき存在なんだなと感じられたのも良かったです。

飛び抜けた天才と狂気は、紙一重だと思わされました。時には、冷静沈着に残虐な行動を取ったかと思うと、まるで子供のように主人公の刑事ルーサーに好意を求める姿は、異様でした。サイコパスとは、こういう人を言うのでしょうか。ルース・ウィルソンの赤髪と薄い水色の瞳がさらにミステリアスを醸し出しています。

7話冒頭で取り調べを受けるシーン、満足そうにずっと口元に笑みを浮かべているのが印象的でした。ジョンのためにリードを殺したことや、他人には理解出来ないであろうジョンと自分の特別な関係に喜びを感じているように見え、ジョンへの歪んだ愛情が伝わってきてゾッとしました。芝居がかっていない静かで淡々とした口調でしたが、それが逆に真実味があって、本心を語ってるんだろうなと感じられたのも良かったです。

ジョンに「助けてくれ」と言われた時の満面の笑みや、協力の準備をする時のワクワク楽しそうな様子が子供みたいに無邪気で、ジョンに頼ってもらったことが本当に嬉しかったんだなと伝わってきました。一方で証拠の銃を盗むシーンやマークを脅す時に見せた犯罪に手慣れた様子や相手を見下ろすような冷たい眼差しはアリスの本来の残虐で冷酷な面を感じさせ、そのギャップが怖くもあり、キャラクターとして興味深く面白くもあり、ドラマの良いスパイスになっていると思います。

サイコパスで感情が読み取れないことが多いけど、「この世に愛はない」と言うジョンを悲しげに見つめたり、「ありがとう」と言われた時に満たされたような穏やかな笑みを浮かべたり、ジョンへの感情だけはとても素直にはっきりと顔に出すところが良かったです。単なる興味が、少しずつ「気を引きたい」「構ってほしい」「何かをしてあげたい」と愛情に変わっていく過程が分かりやすくて可愛らしいとすら思えてきますし、殺人犯で考え方も異常だけど何故か憎めない、不思議な魅力を放っています。

いつも余裕たっぷりの笑みを浮かべているのに、ジョンに「もう君とは会えない」と言われた瞬間サッと動揺した表情に変わって子供みたいに「やだ」と駄々をこねたり、マドセンを殺したことをジョンに責められると「あなたのためにやったのに！」と泣き叫んだり、ジョンに突き放されると途端に情緒が不安定になる姿が印象的で、彼への強い執着が感じられました。メイクも髪型も普通の若い女性らしくて綺麗なのに、どうしてあんなに笑顔が怖いんだろう…。ただ道路に座ってるだけでも普通じゃない異様な雰囲気を醸し出しているのが凄いです。

顔から下しか動かさないちょっと不自然な話し方がロボットのような印象を与え、一般的な人としての感情や道徳が通用しない怖さや異常性を感じさせるところが上手いです。マークに「なぜ自分を襲わせた？」と聞かれた時にすかさず「好きじゃないから」と無邪気に答えるシーンは小さな子供特有の残酷さを感じさせ、大人の女性の魅惑的な笑みや残忍な殺人犯という彼女の背景と違和感があり、アリス・モーガンのサイコみをより強く印象付けていたと思います。

ジョンに向ける挑戦的な眼差しや常に優位に立とうとする余裕のある表情、立ち居振る舞いが天才的なサイコパスらしさを感じさせて良かったです。クセなのか、常にアヒル口で喋るところも幼さとコケティッシュさがあって、凶悪殺人犯の顔とのアンバランスさが絶妙で、ポジション的には敵役かもしれませんがとても魅力的に見えます。