晩酌の流儀

こういう気取ったところのない、ごく「普通」な印象を与える女優さんは貴重だと思います。そもそも「普通」って基準はどこにもないわけで、それは演じている辻さんが「普通」を生み出していると言えます。それはたとえば「美人」というものより、ずっとクリエイティブなことです。素朴でどこかあか抜けない雰囲気、どこか社会なれしていない初々しさ、それらは明らかに演技ですが、とても自然です。こういう女優さんが、日本の芝居文化を下支えているように思います。個人的には主演の栗山さんよりも高評価だし、印象に残りました。

何だか気難しそうな学者気質なお客様に「完全な直観」で選んだ物件を紹介しちゃう大胆さや怖いもの知らずな感じが葵っぽかったです。失敗して落ち込むけどこういう向こう見ずなところもあって、自分なりの仕事の進め方がまだ完全に掴めていない感じが後輩っぽさを感じさせて良かったと思います。喜怒哀楽がはっきり顔に出る素直なところも可愛かったし、飲みっぷりや食べっぷりが豪快だけどとても綺麗で、そんなところも好感度高かったです。

美幸もキャンプに参加すると聞いて「やった～」って喜んだり、山道を散歩してる時も美幸の姿勢や歩き方をチラチラ見ながら真似してたり、美幸のことを慕っているのが丸分かりの素直さが可愛らしいです。ビールと氷を台無しにした支店長を見て顔が強張って怯える姿も、美幸にとってどれだけビールが大事なのかよく分かっているのが伝わってきて良かったです。

最初は戸惑い気味だったボクシングにも徐々に慣れてきて、うおりゃ～って夢中でパンチしまくる姿がすごく楽しそうで生き生きしてました。跳ね返ってきたサンドバックが顔に直撃したり、どれくらい力入れたら良いか分からず美幸をチラチラ見ながら確認してたり、台詞がないシーンもコミカルさとチャーミングさがあってとても良かったです。美幸にビールの注ぎ方を教わる時もキリっと真剣な表情で説明を聞いてたり、楽しい・美味しいって気持ちが全部顔に出ていたり、葵の真面目さや素直さが伝わってくるところも良かったと思います。

見た目もキャラクターもどこかにいそうな普通っぽい感じが良いですね。美幸がなかなか極端なこだわりっぷりでたまに見ていて疲れるので、葵や島村のまったりした雰囲気にホッとします。のんびりマイペースに見えるのに、支店長には意外と塩対応だったり言いたいことはっきり言ってたりっていうところもギャップがあって良かったです。