さよならマエストロ〜父と私のアパッシオナート〜

玉山さんは見るからにヤバそうな恐い役が多いけど、こういう気弱そうでちょっとコミカルな役も巧みにこなすところが凄いですね。古谷というキャラの誠実さや朴訥さ、気弱っぽいけど芯の強さみたいなものが、しっかりと伝わってきます。仕草や動きも、キャラに合った細々とした動きを基本に、喜びなどは大袈裟なほどに表現するなど、視聴者にどう見えるかをちゃんと計算している動きに感じます。引き出しの多い、良い役者さんだなと改めて思いました。

「あなたがいなくても大丈夫」「うちのオケには立派過ぎる」と夏目にクビを言い渡すシーンがとても良かった。声を震わせて必死に涙を堪えるように顔をクシャっと歪ませて、寂しくて仕方ないって気持ちが溢れ出ていて、指揮者としても友人としても夏目のことが大好きで心から尊敬しているんだなって伝わってきてグッときてしまいました。気弱で鈍臭いけどオケや音楽への愛情が深くて、熱い一面もあって、時々チャーミングで、人間味溢れる魅力的な演技でドラマを盛り上げていたと思います。

オケフェスへの出場が決まった時の大の字ジャンプや、皆に出場を報告する時のセルフドラムロールがお茶目で可愛らしかったです。いつもよりだいぶハイテンションで浮かれていて、ホントに嬉しくて仕方ないんだなって喜びを持て余している様子が伝わってきたのも晴見フィルと音楽への愛情が感じられて良かった。ポジティブ思考になったし自然と「シューマン先生」呼びしてるし、しっかり夏目の影響を受けている姿も彼を慕い尊敬する気持ちが伝わってきて良かったと思います。

天音の家出にオロオロしたり、夏目のお説教が始まると「二人とも反省してますし…」と助け船を出してあげたり、夏目の過去の話に感情移入して涙を拭ったり、気弱で優しい古谷らしさが随所で垣間見れたのが良かったです。台詞や出番が少なくても「これ、古谷っぽいな」って毎回ちゃんと印象に残る、丁寧な役作りと演技が素晴らしいと思います。

声を裏返して嗚咽し、膝から崩れ落ちながらホールに最後の挨拶をする姿からホールへの愛情の深さともうここで演奏出来ないという寂しさが痛いほど伝わってきて切なかったです。こんなグズグズに落ち込んで泣いてたのに、前向きな夏目に感化されてすぐやる気に満ち溢れて生き生きしだす単純さも、素直な古谷らしくて良かった。海が編集したオケの動画を観て「すご～い」って女子みたいに手叩いて喜んでる姿も可愛らしかったです。

逃げずに夏目と真摯に向き合う姿が古谷の実直さを感じさせました。「すみません、すみません」と何度も夏目と頭を下げ合うところも人の良さ全開で良かったし、夏目さんと演奏するのが大好きと語るシーンも、心からの本音だと伝わる熱さと真っすぐな気持ちが感じられて良かった。口の中に詰め物まで入れてロッシーニになりきるところも、真面目な古谷らしさが出ていて良かったです。

夏目と倉科の関係を誤解してブチ切れるシーン、普段の穏やかさとは別人のように感情的な姿が印象的で、志帆への想いの強さはもちろんだけど、夏目のことも「見損なった」と激昂するくらい深く信頼して慕っていたんだろうなと感じられたのが良かったです。自分が勘違いをしていたと気付いた時の「どうしよう」と泣きそうになって心底後悔している姿も、古谷の人柄の良さが滲み出ていて良かったと思います。

志帆に一目惚れするシーンがピュアで可愛らしかったです。目を見開いてキラキラにときめいた表情をしていて、古谷にとって運命の出会いだったんだろうなって伝わってきました。夏目に絶対にバレないようにしなきゃと一人ソワソワして動揺して挙動不審になる姿も、焦り過ぎて演奏のクライマックスで大ミスかましてしまう姿も面白かったです。バレたくないっていう気持ちの中に、保身や体裁だけでなく、夏目のことも尊敬していて好きだからという思いがあるところも、古谷らしくて良かったです。

大輝に遠慮なくダメ出しする羽野を「それぞれのペースがあるから」と穏やかに諭したり、憤る団員に「悪気はないと思うよ」と宥めたり、ヤケ酒する大輝の背中を撫でて慰めたり、誰に対しても平等に優しくて周りを気遣ってフォローする姿が団長としての責任感と古谷自身の大らかで温かい人柄を感じさせて良かったです。コートのフードを被ってコソコソとコンサートのチラシを貼っていく姿や、貼るたびに成功を祈ってか神社のお参りのように手を合わせる姿も「市長に邪魔されずに絶対成功させたい」っていう古谷の熱い思いが伝わってきて良かったと思います。

志帆に見つめられた時の挙動不審っぷりや目も合わせられないピュアな姿が可愛らしかったです。１話ラストでは不倫か？って疑ったけど、あまりに純朴な反応に古谷の片思いなんだろうなって思い直しました。市長に「晴見フィルの団長です」と名乗る時の真っすぐ市長を見据える強い視線とはっきりとした口調も、晴見フィルの一員としてのプライドと意地が感じられて良かったです。

夏目さんの前で少し臆するような態度だったりちらっとみる感じがとても気になっていましたが、それは志帆さんと関係があるからなのですね。それで前のご主人である夏目さんを特別な目で見ていたと。少し気の小ささも出ていて人間らしいなと思いました。

朴訥とした雰囲気と穏やかで丁寧な口調が古谷の誠実さや実直さを感じさせて良いですね。助成金の打ち切りが決定した時の絶望した様子や、「お名前だけでも貸していただけませんか」と夏目に必死に頼み込む姿が、晴見フィルへの深い愛情を感じさせたのも良かった。夏目の前で志帆の名前を出す時の後ろめたそうな表情や、ラストで見せた志帆との仲睦まじげな姿も訳ありな感じで印象に残りました。