フェイクマミー

泣き崩れる夫に「もう戦わなくて良い」と寄り添うシーンが良かった。包容力があって温かくて愛があって、大人しくて控えめだった姿とは別人のように強く大きく見えました。さゆりの内面の変化、成長が伝わってきて、これからきっと、この家族も良い方向に変わっていけるだろうなって確信が持てたのも良かったです。

震える声で薫とまみえを責めた時、さゆりさんの気持ちになれば何をされても仕方ないのかもなんて思えほど説得力があった。旦那に期待されているのは七光りの自分だし、本当の友達だと思った人は嘘ばかりだったしの絶望と寂しさが伝わってきた。さゆりさんにも幸せなラストがあるといいなと思ってしまうね。

息子のテスト結果がまた3位だったと聞かされた時の絶望したような眼差しや、野添に「１位は？」「どれくらいの差なんですか」と矢継ぎ早に質問して詰め寄る姿が、さゆりの極限まで追い詰められた精神状態を感じさせました。ちょっと危うさを感じさせるくらい紙一重な感じが、瞬きを忘れたような遠い視線や前髪にまで伝わる唇や身体の震えから伝わってきたのも良かったと思います。

本当は混乱してるし怒ってるし問い詰めたいことがたくさんあるんだけど、それを表面に出すのを最小限にしているところがいいなと思いました。育ちの良さや品の良さも感じるし、なにより怒り慣れていないのかもって感じがするのがすごくいいです。

サマーキャンプの食材運びのくだりや、「妹」について質問攻めにする姿など、ジワジワ、チクチク薫を攻撃する姿が陰湿で怖いんだけど、それでも品の良さが失われないところがさゆりの育ちの良さを感じさせて良かったです。怒り・憎しみだけではない深い哀しみが滲む眼差しも印象的でした。

旦那のスマホを見て震えながら崩れ落ちる場面は彼女の真面目な性格からして考えられないことですごく真実味があったと思う。1番地味で自己主張しないさゆりが1番の危険人物になるところにゾクゾクした。薫を遠ざける場面で冷たさがそこまでなかったのはさゆり故だろうと思った。

夫と茉海恵の過去に気付くシーンが良かった。夫のスマホを操作する指が震えていたり、写真を見た途端口元を抑えて座り込んでしまったり、さゆりのショックの大きさが伝わってきて胸が苦しかったです。茉海恵と友達になれた時の笑顔が本当に嬉しそうだったから余計にその姿が痛ましかったし、翌朝の薫への態度豹変も不穏さいっぱいでソワソワ、ハラハラさせられました。

三羽烏に囲まれた時の毅然とした対応が格好良かったです。口調はソフトで声音も抑えめだけど、言葉に迷いがなくて心から薫を尊敬して慕っているのが伝わってきて、「私のTeacher」という表現も決してオーバーではなく本心なんだなって感じられました。

謝って済むなら謝った方が楽と答えたのが印象的でした。その時の寂しそうな顔も普段どれだけ虐げられているのかが分かります。旦那の圧もすごいし、それには謝る方が早いと考えてしまうのも自然でしょう。息子とのひと時の笑顔が幸せそうで切なくなった。

薫にイラストを褒められた時や、息子に「いろはちゃんのママにも褒められたのよ」って伝える時のはにかんだような嬉しそうな笑顔が良かった。昼間の些細なやりとりを自宅に帰った後も噛みしめるように喜んでいる姿が、日頃どれほど夫に自己肯定感を抑圧されてるんだろうって感じさせて、胸がキュッと苦しくなりました。

保護者会ではあんなななオロオロしていたのに薫と一緒だとすごく強気になっちゃうのがなんだかなーと思った。確かに薫と出会って強くなっていくっていうキャラなのかもしれないけど、感化される経過が見えないからモヤモヤする。キャラ変が激しくて驚いた。

九条が「紅茶が美味しいお店」と話しているのにわざわざコーヒーを頼んだり、佐々木の愚痴に話が転びそうになっても「生徒たちからの評判はとても良いと伺いました」とフォローを入れて自身は一切ネガティブ発言をしない姿が、本橋の意外と気の強い一面や、慎重さ、聡明さを感じさせました。おしとやかで上品な雰囲気も、家柄や育ちの良さが感じられて良いと思います。

三羽烏の説明台詞、小声で早口気味なのに言葉一つ一つがクリアでとても聞きやすいところがさすが。抑え気味の声のトーンや遠慮がちな態度、九条の圧に押されてはっきり意見が言えない姿も、本橋の控えめで内気な性格を感じさせて良かったと思います。