下剋上球児

ザン校が勝つわけないという町の人たちに「高校野球は最後まで何があるか分からない」「勝ったら気持ちよく送り出してあげたい」と訴えて頭を深く下げる姿や、「報われてくれ」と祈るように応援する必死な表情、勝利を喜ぶ時の潤んだ目や嬉しそうな笑顔、学校の名誉とか関係なく、ただただ一生懸命頑張ってきた生徒たちを思う気持ちが溢れている姿がとても良かったです。熱い言葉が建前や口先だけのものではなく、心からのものだと感じられる真っすぐで誠実な雰囲気も小泉さんならではの魅力だなと感じました。

校長として南雲に対する厳しい態度、そして甲子園に行くための資金集め、過不足ない演技だったとは思います。でも不満なのは丹羽校長は民間からの登用だと、わざわざ設定されているわけです。だから横田のような根っからの教師とのコントラストが必要だった。横田が南雲をかばうシーンは明解な教育論でした。その対比として丹羽は校長らしい厳しさは良いとして、民間人らしい柔軟さも欲しかった。また資金集めのところではもっと民間人登用らしいアイディアや、人脈を見せて欲しかった。そこが残念です。

せっかくの準決勝なのに次々と問題が起こるけど、感情的にならず落ち着いて動く姿がさすが問題児だらけのザン高の校長だなっていう説得力がありました。越山カラーのネクタイしてるのも可愛い。病院のテレビで試合を見ながら「頑張ろう」って声をかける姿も、釘付けになって試合に見入る真剣な表情も、勝利が決まった時の興奮した姿も、まるで少年のようで、校長っていう立場よりも丹羽個人の感情が全面に出てる感じがして微笑ましかったです。

TVインタビューでの嬉々とした姿や、日沖たちに越山Tシャツを追加注文するなど、学校の名誉回復はもちろんだけど、丹羽個人も野球部の活躍に興奮して喜んでいるのが伝わってくるところが良かったです。「君らがいたから今がある」とＯＢをしっかりフォローするところも丹羽の人の良さが滲み出ていて良かったと思います。

南雲と対面した時の渋く険しい表情が、彼の真摯な態度と横田の熱い説得を受けて徐々に変化していく様子が、丹羽の心の動きそのままを表しているようで良かった。色々あっても褪せることのなかった南雲への根強い信頼や、教育者の先輩である横田の言葉を聞き入れる素直さ、学校の評判回復という大義名分で南雲にチャンスを与える丹羽の懐の深さが感じられたのも良かったです。

南雲と電話するシーン、表情も口調も堅くて壁を感じるけど、敢えてそうして体面を保っているようにも見えて、丹羽個人としてはどうしても完全に南雲を嫌いにはなれないんじゃないかなと感じられたのが良かったです。「あなたを頼りにしていました」という言葉も心からのものに聞こえて南雲への深い信頼が伝わってきたのも良かったし、だからこそ余計に悔しくて腹立たしくて、その気持ちをいまだに持て余している様子が感じられたのも良かったと思います。

南雲は越山の教師でも関係者でもないと、毅然と言い放つ姿が印象的で、裏切られたことへの憤りと、校長として学校を守らなければという強い覚悟が感じられたのが良かったです。保護者説明会でも便宜を図るつもりはないときっぱり宣言するなど、情を一切挟まない冷静な姿も数年で越山を立て直した有能な丹羽らしさを感じさせて良かったと思います。

アイドルのコンサートみたいな団扇を持って、試合運びに一喜一憂しながら声を張り上げて応援する姿が印象的でした。立場上仕方なく来ましたみたな感じが一切なくて、心から楽しんでいるんだなって感じられたのが良かったです。「何で兄貴は出やんのですか」と食ってかかる壮磨に、きちんと彼の方向に体を向けて敬語で丁寧に事情を説明する姿も、丹羽の誠実さや実直さが感じさせて良かったと思います。

教師を辞めるという南雲の話をにこやかにのらりくらりと躱す姿がやり手の丹羽らしさがあって良かったです。南雲のことを心から信頼して頼りにしていることも伝わってきて、今回も絶対に辞めさせてくれないんだろうなあっていう空気が感じられたのも良かったと思います。飄々としていて掴みどころがないから余計に手強そう。南雲の問題を知った時、どんな対応を見せてくれるのか楽しみです。

綺麗めのスーツやスリーピース姿がよく似合っていて、ラフな格好で体育会系丸出しな南雲と良い対比になっていたと思います。校長先生にしてはかなり若いけど、賢くて有能そうに見えるし、人柄も朗らかで人望がありそうだし、頼りなさを感じさせないところも良かったです。