春になったら

笑顔が素敵だなといつも思っていたけど、瞳としてお父さんを見る眼差しがいつしか保護者のようになっていて癒しと安心を感じられた。お父さんの残り少ない人生をどれだけ笑顔にできるか常に考えているような優しさを常に感じられてこれだけしてあげられたら後悔はないだろうなと思った。人を思う笑顔はもっと素敵だった。

軽妙さと深刻さのバランスがいい。助産師として誕生の喜びを感じながら、帰宅すると娘として父の死と向き合わなければならない埋めがたいギャップを、ほんの一瞬の表情で語っていた演技は見事でした。深刻になりすぎない軽妙さも見せつつ、生と死という深いテーマを家族という温かい視点で見られたのは、木梨さんと奈緒さんの演技によるところが大きかったと思います。奈緒さんは憂いのある表情と笑顔の両方がとても似合う、本当に良い女優さんです。

助産院で痛みに動揺する妊婦の顔をしっかり見ながら一緒に頑張りましょうと力強く言ったり、無事に産まれた後誰もいないところでヘナヘナっと倒れたりと出産が命懸けの真剣勝負だということが伝わります。リアリティが増してとても良かったです。

死に向かってだんだんと具合が悪くなっていく雅彦を目の当たりにしながら、瞳も動揺しているだろうに落ち着いた声や温かい眼差しで雅彦を包んでいる。娘が精神的にも父の保護者になっている様子がわかる。お父さんのためにという信念みたいのが見える。

助産院で働いている瞳はいつもよりすごくしっかり見えて柔らかで落ち着いた笑顔、それでも家に帰ればお父さんの娘というポジションで泣いたり怒ったりする。もう世間から見れば十分大人だけど親のいるうちはあんなもんよね。娘でいられる幸せを噛み締めているようで切なくなる。

ちょっとギャーギャー言いすぎだけど娘と父親なんてあんなもんだと思います。娘だから意地になることもあるしね。父親からしたらあんなに全力でぶつかってきてくれる娘はかわいくて仕方ないだろうし。お父さんを困らせたい娘がかわいいなと思います。

これから死んでしまうお父さんのことを思いながら、仕事としてこれから生まれようとする命に向き合うところが難しいと思いましたがそれを上手に折り合いをつけてしっかり演じていたと思います。治療を受けてほしいと号泣する顔は子供に戻ったようでこちらまで胸が痛くなりました。