良いこと悪いこと

誰が犯人かはさておき、キングって面白いなと思う。いじめっ子の主犯格でありながらクラスでは誰もが一目置くヒーローなのだ。誰かを励まし導いていながら、園子を容赦なくいじめる圧倒的な悪でもある。仲間にはあれだけ慕われ女子に憧れられながら、今そんなに幸せそうでもないのも興味深い。クラスという小さな世界で風向き次第で誰もが被害者にも加害者にもなるのは大半の人が経験済みだろう。キングを絶対的な悪だけにしないのが面白い。

サキは園子のことを加害者でもあるのにいつまでも被害者づらをするのはズルいって言ったんだよね。でもこちらから言わせればサキが1番ズルいじゃん。サキはキングへの恋心から園子のイジメに加わった。そして1番大事なところを担いながらその罪は公にすることなく自分の弟の件だけで園子に危害を加えようとした。とりあえず今も昔も園子のことが目障りだったのよね。イジメの始まりなんてそんな些細なものなのよ。1番の白だと見せかけての黒、そしてその悪さに自分自身が気づいてないのが救えない。

そうか、クラス内で起きていたことだからクラスメイトだけじゃなく先生も当事者なんだよね。先生目線のいじめも聞いてみたかったけど、あの頃いじめはなかったとか気づかなくて教師失格ねなんて言葉だけが上部を滑っていく虚しい再会になってしまった。そんな風に切り捨てられるいじめられっ子は絶望するしかない。立派な二次被害だ。園子にとって校舎を歩くことは苦痛でしかない。そこを懐かしいなあの頃は楽しかったなと歩くいじめっ子、でも俺らだけが楽しかったんだろうなという一言に少しだけ救われた気がした。

カンタローは火災現場から救出されて快方に向かっていたところを拉致されて押さえつけられての焼死。死に様はかなりの酷さでそこには絶対に許さないという強い意志が見えた。これを見たらもう犯行は止められないしいじめていた子供たちは全員死ぬんだろうなと思うだろう。今のところ余裕がありそうなダーボーもおちおちしていられない。でもカンタローは病院から連れ攫われているのだから院内のカメラを見ればすぐに犯人が分かりそうだよね。次回はとうとう犯人現る、か？

私が園子だったら、いまだにその時のあだ名で呼んでくる同級生を許せないし本気で謝ってもこない人を助ける義理はないので自分に容疑がかからないようにだけ気をつけて事件に関わることはしないと思う。時に敵意を向けられてまで説得に行くのがよく分からない。いじめっ子の方もこのくらいの罪悪感しか持っていないのかと悲しくなるが、それが現実で覚えているのはまだいい方なのかもしれない。誰が犯人なのかの考察よりもいじめっ子の未来に絶望している。

イジメはほんとに些細なことから始まる。ニコちゃんは転校してきた園子が物珍しさからみんなに囲まれているのを横目で見ながらこれ以上目立つなよ？と思っているのが見え見え。そして自分が園子の物を盗んだのに疑われると被害者ヅラ。それを見た単細胞キングの間違った正義で暴走スイッチが入る。細胞分裂のように日々繰り返される突然の変化に、もはやいじめの撲滅などできないだろうと本気で思う。園子の傷ついた心は戻らない。それでも殺人を止めたいと思うのはなぜだろう。その心理が知りたい。

子供の頃の悪事は時効になるか？というのがひとつのテーマかなと思いました。加害者はキング以外はあんまり覚えていない様子。言えば今更みたいな返事しか返ってこないところに強い憤りを覚えるけど、実際そんなもんでしょうね。みんながやったから、そんなに嫌がってると思っていなかった、など自分の罪が軽くなるような言い訳ばかりが出てくる胸くそ悪い展開にこの人たちなら天罰が下ってもいいのでは？と思わず思ってしまう。ただどの子のそれじゃ私も悪い子になるっていうのが印象的。同じレベルに落ちてたまるかという心が見えていじらしかった。