恋は闇

初登場シーンでは、いざとなったら躊躇なく設楽を切り捨てそうな冷たい印象を受けたけど、設楽との関係が描かれていくうちに、彼をこの世界に引っ張った責任や期待、危なっかしい姿を見守る親のような心情が感じられるようになって、人間味が増して体温が感じられるようになっていったのが良かったです。登場したと思ったら数話出てこなかったりと、出番は限られたものだったけど、設楽の理解者がいるという安心感と信頼、存在感は抜群だったと思います。

何も知らずに浩暉を叩く世間の声に「腹が立つ」と声を詰まらせて憤る姿が印象的でした。浩暉の記者としての信念や情熱を誰よりも間近で見てきた尾高だからこその悔しさやもどかしさが感じられて、万琴に言った「母心」という言葉に説得力があったのも良かったです。

浩暉とのテンポのよいやりとりや遠慮のない空気感が二人の付き合いの長さやしっかりと築かれた信頼関係を感じさせました。スクープ取るためなら何でもやるっていう台詞も、表情や口調はおどけたものだったけど、軽口ではなく本気の言葉なんだなと感じる重みがあって、マスコミに携わる人間の信念とプライドが伝わってきたのも良かったと思います。

「そんなもんでしょ、世の中って」と口にする設楽を見つめる表情が、何か知っていそうな含みを感じさせて印象に残りました。設楽の能力を買っていて信頼しているのは伝わってくるけど、もし何か問題が起こったら「知りません」ってすぐ斬り捨てそうなドライさが滲むところも、ズバズバと遠慮のない物言いや、サバサバした態度が尾高の人柄を感じさせるところも良かったです。