ONE DAY〜聖夜のから騒ぎ〜

主人公ではないけれど、ある意味でこれは梅雨美の物語だなと思います。なんなら立葵のパートを無くして、梅雨美視点のパートを組み込んでも良かったのではと思うくらいです。それほど彼女の存在はひとつの核になっています。彼女が待っているから勇太は誠司としてのすべてを終わらせ、警察官としての自分も捨てたのだから。桜井さんの芝居は可哀想な女性をただ可哀想にではなく、強くたくましいところや繊細なところをうまく表現していて、愛する人を信じて、しっかりと踏ん張って生きているひとりの女性の姿を感じさせてくれました。

天樹との再会シーンが良かったな。近づいてくる天樹に「ふざけんな」「別に待ってなかった」と最後まで強がるところが不器用な梅雨美らしくて可愛らしかったし、抱き締められた瞬間泣き出してギュッとしがみ付く姿も想いが溢れ出ている感じがあってグッとくるものがありました。

メインディッシュを待っている間にノリノリで繋ぎトークを繰り広げる姿が、良くも悪くも出たがりで調子に乗りやすい梅雨美らしさ全開で良かったです。最近は天樹の件でしんみり切ない表情を見せることが多かったので、久々に心から楽しそうな生き生きとした笑顔が見られたのも嬉しかったです。

居ても立っても居られず、バスジャック現場に走っていく姿や、シェフから天樹の無事を聞いた時の心底ほっとしたような表情や膝から崩れ落ちる姿、シェフの「彼は殺していない」という言葉に目を潤ませて微笑む切ない笑顔、口には出さなくても、今も天樹のことを大切に想っていることが伝わってくる繊細な演技がとても良かったです。心配してくれた細野につい強がってしまったり、気持ちを誤魔化してしまう不器用なところも梅雨美らしくて良かったと思います。

天樹との関係を話す時の淡々とした口調や表情、その中にたまに滲む懐かしそうな微笑みや寂しげな眼差しが、今も残る天樹への想いを感じさせて切なかったです。感情的になり過ぎない、どこか気持ちを抑えたような話しぶりも強がりな梅雨美らしさがあって良かった。天樹のバスジャックを知った時の無言で目を見張るだけという反応も、変に取り乱すよりよっぽどリアリティがあって良かったです。

武智泥棒の正体を知って「私、馴れ馴れしかったよね？」「絶対怒るやつだよね？」と気にして怯える姿が可愛らしかったです。シェフと桔梗のやりとりを耳をダンボにして聞いてる姿も面白かったし、天樹勇太について語る時の切ない表情も良かったし、1話の中でコミカルさとシリアスさ、どちらの顔も見せてくれて梅雨美というキャラクターに奥深さが増したところも良かったと思います。

５年も恋人を待っているという一途で健気な一面が垣間見れたのが新鮮で良かったです。細野へのアシストや菊蔵へのアドバイスも単なるお節介ではなくて、連絡が取れる、会おうと思えば会えるという状況にある二人に早く行動を起こして後悔しないようにしてほしい、自分と同じような辛い思いをして欲しくないっていう思いが込められていたんだなと思うと切なくなってしまいました。

1話、2話は煩くてちょっと鬱陶しいなと感じましたが、3話くらいのテンションと出番なら程よい息抜きシーンになって良いかなと思いました。菊蔵の特製ソースを味見した時の真顔や、シェフと菊蔵のやりとりを見つめている時の淡々としたツッコミなども控えめな芝居だったけど、力んで笑いを取りに来ていた2話よりずっと面白かったです。

おちゃらけた笑えるパートなんだろうけど何回も繰り返されるとめんどくさいというかウザくなってくる。チャカのくだりがそう。そんなことより物語を前に進めてよって思ってしまう。ちょいちょい出てくるキメ顔も正直うざいです。

バッチリメイクしてノリノリで査子の取材に応じる姿が面白かったです。やたら芝居がかった話しぶりや何度も「チャカ」と言ってNG出してしまう姿もチャーミングでした。思ったこと何でもはっきり口にするところは見ていて気持ちが良いし、レストランメンバーの中で誰よりも肝が据わっていて頼もしくて良い味出してると思います。