ONE DAY〜聖夜のから騒ぎ〜

笛花という男の持っている甘さや弱さ、優しさやヤバさ、功名心や焦りなど、さまざま複雑な感情をうまく表現していたと思います。そして最終的には犯罪組織の一員としては甘いのかもしれないけど、人としては正常な優しさを見せたところも人間臭くて良かったです。中川さんはコメディからシリアスまで、どんな役もリアリティのある芝居が出来ていますね。おそらくしっかりと役の背景を掘り下げ、役作りをしているのでしょう。芝居っていうのはちゃんとそういう地道さが見える。いろいろな背景が見える良い演技でした。

警察に逮捕されることになっても「もう誠司さんを疑わなくて済む」と何処かホッとしたような表情を浮かべていたり、「撃てるわけない」と項垂れて自嘲気味に笑ったり、誠司のことを心から慕って信頼していた気持ちが表情からも口調からも痛いほど伝わってきて切なかったです。犯罪組織のボスだけど佇まいに品があって、いつも何処か孤独や哀しさを滲ませていて、詳しく描かれなくてもミズキのバックボーンが透けてみえるような奥深さを感じさせる演技もとても良かったです。

父親に認めて貰えない悔しさやも焦燥感、鼻をあかしたいという焦り、誠司を信じて良いのか確信出来ない不安、精神的に追い込まれた様子が少し潤んだ目や自嘲気味な笑みから伝わってきて、見ているこちらも胸がザワザワと苦しくなる心地がしました。ラストで誠司に銃を向ける時の感情が読めない表情も印象的で、本当に誠司を殺す気なのか、それとも父親を裏切るのか、何を考えているのか・何が起こるのか掴めないミステリアスさが最終回への期待を高めていて良かったと思います。

誠司との出会いについて語る時の懐かしそうな穏やかな笑顔、誠司に「最初は面倒だった」と言われた時のあからさまにショックを受けた表情、「誠司さんが俺を育ててくれたんです」と告げる時の真っすぐな眼差し、いつものポーカーフェイスが嘘みたいに感情駄々洩れな姿が印象的で、誠司を慕う気持ちや孤独や苦しみを理解して救ってくれた感謝、色んな思いが伝わってきて、人間味があってとても良かったと思います。ミズキにとって誠司は心の拠り所なんだろうなと感じられて、思った以上に強かった二人の絆にグッときました。

誠司への疑惑と信じたいという気持ちの鬩ぎ合いに葛藤する姿が、これまで築いていた二人の絆の強さや信頼関係の深さを感じさせて良かったと思います。誠司のことが大好きで心から頼りにして慕っていたんだろうなと伝わってきて切なくなりました。バスジャック現場で一課長とすれ違った時の顔を背けるような仕草も、アネモネと一課長の関係を匂わせているようで印象に残りました。

査子に拳銃を向けて情報を聞き出そうとするシーンが迫力があって見応えがありました。椅子を蹴り飛ばしたり力づくで椅子に押さえ込んだり大声で怒鳴ったり、それまで割と落ち着いた静かな口調で話していたから突然の豹変ぶりが余計に恐怖を掻き立て、事態を把握しようとするミズキの焦りや苛立ちが伝わってきたのも良かったです。

葵亭の面々に武智と間違われてしまうシーン、戸惑って苛立ちつつ終始自分のペースを乱さない肝の据わりっぷりと冷静さがミズキの有能さを物語っていて良かったです。みじん切りがめちゃくちゃ下手くそだったり、動きがいちいちぎこちなかったり、「仕事は命がけでやるもの」なんて本音を話してしまったり、クールな中にも普段見られないちょっとコミカルで人間味のある姿が垣間見れたのも良かったと思います。

蜜谷と対峙するシーンで見せた余裕のある佇まい、格好良かったです。感情的になる蜜谷に全く動じることなくのんびりお茶を飲んでいたり、冷めたような視線を向けたり、丁寧で穏やかな口調だけど何処か挑発的だったり、国際的な犯罪組織のボスらしい風格が感じられたのも良かったです。

襲われている誠司を見ても慌てたり怒ったりせず、ただじっと見ているだけだったけど、その時の表情が「誠司さんなら大丈夫」という信頼なのか、彼がどうなっても構わないというものなのか、どちらとも取れそうな冷めたものに見えたのが印象的でした。台詞も少ないし出番も少なめだけど毎回ちゃんと印象に残ってしっかり存在感があるところもさすがだなと思います。

蜜谷と何を話したのかや、八幡が何者なのかなど、誠司に執拗に探りを入れる姿が怪しくもあり、本当に心配しているだけにも見えたり、どちらとも取れそうな絶妙な演技でとても良かった。誠司のことを命の恩人だと思って慕っている気持ちは本物に見えるし、安西と誠司のやりとりを見つめている時の探るような鋭い視線も意味深だったし、登場するたびに敵？味方？と表情の変化一つ一つで見ている側を揺さぶってくるところも上手いです。

誠司に見張りやGPSのことがバレても平然とした顔をしていたり、「信頼している」と口にするわりに表情が冷めていたり、誠司のことを思っているのか、何を考えているのか、心の底が見えないミステリアスさが良いですね。誠司と八幡を見つめる鋭い視線や、八幡と目が合った時の意味ありげな表情も印象深くて、出番は多くないけどしっかり存在感を示していたと思います。

クールな態度とポーカーフェイスっぷりが格好良かったです。警察とのカーチェイスを楽しんでるような表情や、計画的で無駄のない逃走劇など、有能さを存分に発揮しつつ、何処か冷徹になり切れない弱さのようなものも感じさせて、その少し危うい雰囲気が若き2代目という感じがあって良かったと思います。