東京怪奇酒

野生動物にみたいにいつも危険がつきまとうわけではない人間が、こういう怪奇酒のような形で恐怖を感じ、生きているという実感を得るというのは案外リアリティがあるし、なんだか危うさと可笑しさがこみ上げてきます。原作のマンガ家さんが考えたものなのかわかりませんが、本当にこれをやっている人たちがいるとしたら、それはまたある種のホラーで、奇怪なことだと思います。これを演じてのける杉野遥亮さんの壊れっぷりもいい。怪異スポットの怖さよりも、ある意味で人間の方がよほど怖いなと思わせてくれるドラマです。

最初は怖いものがめっぽうダメだった杉野さんが、ドラマ終盤まで来るともうすっかり怪奇酒の虜になっていて、更に依存性をそれとなく示すセリフや目がちょっと怖いくらいでした。で幽霊を見て「分かる～」と叫びながら駆けだすシーンが毎度待ち遠しくなるほど癖のあるものにしたのが見事だと思います。あとは番組最後の、開運飯の時間が凄く好きでした。「お待たせしました～」と料理を運んでくるボルサリーノ関さんの声が癒しでした。

怖がりだった杉野遥亮が、最初にオファーが来た時はあんなに嫌がってたホラー映画も、怪奇酒を経験したら刺激が足りないと突き返すなんて、恐怖への耐性がこんなにも成長するとは。でももう二度とやりたくないという顔をしてた岡山天音を見たら、杉野は始めから向いてたんだろうな。でももっともっとと刺激を求めると、こういうヤバいことになるんだ！と震え上がった最終回。事故物件の聖地で怪奇酒って！霊感が無い方が向いてるのかなぁ。杉野、最後は死んじゃうのかなと思ったけど生還したものの、またそのうち怪奇酒を再開させるつもりっぽいので心配だわ。

杉野が、心霊スポットの恐怖の中で飲んだ酔いが回ってきて「混ざる?」と叫んだ後、毎回、笑顔で走り去ってしまうので、この間に一体何が？と思っていたのだけど、無理矢理ついてきた岡山天音のおかげで、杉野遥亮がどんなことになってるのかわかった。それと同時に、天音が悟ったように、「混ざる?」などと怪奇酒を楽しめる杉野は普通じゃないのだ、と。ホラーが苦手と言っていたけど、向こう側の人間だというのはこういうことなんだな。岡山天音の怪奇酒は怖かったなぁ。心霊と飲める杉野遥亮は凄いよ！そして原作者の清野とおるの発想がすごい。

事故物件住みます芸人の怪しい語り口に、杉野遥亮と一緒に引き込まれてしまった。つい興味を示してしまって「あなたこっち側の人間ですよ」って言われるの、色んな意味で怖いけど、仲間になれそう？とちょっと嬉しいような気がするのもわかる。小さな書店でエロ本を購入して「あ、杉野遥亮」と顔バレするのも可笑しかった。しかし、心霊スポットでガンガン飲んで、恐怖と酔いが頂点に達して、ギャー！って顔になっちゃって仕舞いには街を走り出しちゃうの、ヤバいですよね？杉野遥亮、イケメンですよ？夜中に笑いました！

杉野遥亮が本人役のドキュメンタリーっぽい、怖い話っぽい、コメディっぽい、これは何が始まった？みたいなドラマが来た！杉野くんが涼しい顔したイケメンなのに、後戻りすることばっかり考えてずーっとビクビクしてる怖がりなのが、逆に安心してみてられる不思議なドラマ。ビールとカップの日本酒をこんな廃墟みたいなところでごくごく飲んじゃって寝っ転がって、汚れちゃうんではなどと心配になってしまった。心霊スポットの扉を開けた、最後の顔ったら！