嘘解きレトリック

鹿乃子や倉田夫妻にはとても丁寧に接していて生真面目さ全開な態度なのに、左右馬に対してだけ扱いがすごく雑で遠慮がないところが二人の仲の良さを感じさせて良いですね。雅姉さん探しを必死に頼むわりに、無理やり左右馬を事務所から連れ出したり、ズズーっと引きずったまま歩いたり、振る舞いが人に何かお願いする時の態度ではないところも面白くて、この二人ならではの空気感で良かったと思います。

左右馬に「誠実でありたいなんて言いながら嘘をつくのか」って責められてショックを受けて胸を押えている姿や、鹿乃子に嘘をつかないよう気を遣い過ぎて、ものすごくぎこちなく不自然な対応になってしまうところが、真っすぐで正直な端崎らしくて良かったです。時折見せるこういう不器用さやチャーミングさと普段の生真面目でお堅い雰囲気の絶妙なバランスも魅力に感じます。

イメージに過ぎないけれど、もっとも時代感があれるキャラ作りが成功しているなと思います。

実直かつ生真面目で、親切かつ正義感があり、間違いなく信用に足る男である端崎。演じる味方さんは芯が通ったような立ち姿やきっちりとした仕草など見た目はもちろん、思い込みが強めな性格など、本当に見事に表現しているなと思います。祝に信頼されて当然だし、鹿乃子も安心できる相手であるのが伝わってきます。

もったいないので、もっと登場して欲しいくらいです。

ご婦人から手紙とお金が送られてきた時の喜びようが凄まじくて、詐欺だったと一旦結論づけた時に相当ショックで傷ついたんだろうなあって伝わってきたのが良かった。途中で転んだからスーツが汚れてるし、髪も乱れてるし汗だくだし、「どうやったらそうなる」っていう左右馬のツッコミも相まってすごく面白かったです。「自慢しに来たのか」という左右馬の言葉に満面の笑みで「うん」って頷く姿も子供みたいで可愛かったです。

幽霊なんてバカバカしいって一蹴しそうな雰囲気なのに、鹿乃子と一緒になってしっかり怖がってる姿が意外で可愛らしかったです。あんなに怯えていたのに、呻き声の主が人間だったら放っておくわけにいかないとサッと刑事モードになって先頭を歩く姿も、正義感が強くて困ってる人を放っておけない根っからの警察官っぷりが感じられて良かったです。

左右馬とのああ言えばこう言う的なポンポン弾む言い合いが楽しい。しっかり者で身なりも態度もいつもキチっとしてるけど、左右馬と一緒だと箒で突いて小競り合いをしたり、ムキになって言い返したり、ちょっと子供っぽくなるところも親近感が沸いて良いと思います。

言い合いをした後でも鹿乃子に「一番古い友人なのです」と大切そうに祝のことを話す姿が、二人の絆の深さや祝を大切に思う気持ちを感じさせました。「こいつ」「貴様」と悪態をつきあうシーンもテンポが良くて見ていて心地良い。女性の正体を知ってしまった時の「貴様には敵わんな」という台詞も、祝の探偵としての有能さに感服する気持ちだけでなく、初めから本当のことを言って欲しかったという悔しさや悲しさのようなものが感じられたのも良かったです。

逃げる犯人を華麗に投げ飛ばして捕える姿が頼もしくて格好良かったです。貧乏でも他人を妬まずほのぼのしている祝たちを見て、何処かホッとしたような表情になるところも、捕えた犯人たちとの差をしみじみ実感しているようで良かった。仕事柄、人間の醜さを目の当たりにして心がすり減ることが多そうだけど、祝や鹿乃子、倉田夫妻の温かさに救われてるんだろうなと感じられたのも良かったと思います。

祝への遠慮のない態度やテンポの良いやりとりが、二人の仲の良さや信頼関係を感じさせて良かったです。事情聴取を終えた鹿乃子を心配して駆けつけたり、仕事を紹介してあげようと考えていたり、すごく親切だけどそこに下心を感じさせず、警察官として居場所も仕事もない鹿乃子を放っておけないんだろうなと端崎の面倒見の良さや優しい人柄が伝わってきたのも良かった。七三分けに眼鏡っていうレトロな扮装もよく似合っていました。