私の夫は冷凍庫に眠っている

夏奈に関わることだと平気で人を刺すし遺体を隠すのも手伝うし、その後も平然と普通に生活しているし、あからさまに悪党の奏や唐沢よりよっぽど怖い人ですよね。明らかに普通の思考回路や精神状態ではないけど、淡々と普通の母親らしく演じているところが木芽の異常さを際立たせていて良かったと思います。バラエティでの天然ぶりと釣りバカの印象しかなかった方ですが、こんなにちゃんと演技が出来るんだなと嬉しい発見でした。

冷凍庫の死体を見せられた時の何とも形容し難い悲鳴とか、線香花火をしている夏奈を見つめる表情とか、ちょっとした仕草や台詞のニュアンスにリアリティがあって上手いです。夏奈の本当の母親ではないらしいけど、夏奈を守るために探偵を雇ったり亮を刺したり、必死で心配する姿は母親そのものだし、でも普通の親子とは違う壁や距離感も感じさせて、一体どういう関係なのかと好奇心を掻き立てる演技を見せてくれていると思います。

阿久津から亮の正体を聞いている時に思わず目を閉じて頭を振る様子や、孔雀に電話する時にコール音すらもどかしそうな焦った姿が印象的でした。夏奈のことが心配でたまらないという不安が伝わってきて母親らしい愛情が滲み出ていたので、ラストの凶行は衝撃的でしたが、それでも唐突な印象をあまり受けなかったところが良かったと思います。

夏奈に気付いた時の笑顔や亮とのことを心配して話を聞こうと向き合う姿に母親らしい温かみが感じられました。夏奈と向き合う時のちょっと様子を窺うような視線も、彼女の本心を見ようとしているのかなとカウンセラーらしさがあって良かったです。普通の親子とは違う大きな壁がある距離感も感じさせて、意外と言っては失礼ですが演技が上手くて驚きました。

亮を品定めするように見る無遠慮な視線や壁を感じさせる冷たい口調が印象的でした。警戒心MAXって感じで、丁寧に挨拶する亮を見ても全く信用せず心が動いていないことが伝わってきました。孔雀に「あの子に何かあったら…」と監視を頼む時にちょっと声が不安そうになるところも、母親らしさが感じられて良かったと思います。

夏奈への口調や態度に棘とよそよそしさがあり、2人のただならぬ親子関係が伝わってきたところは良かったと思います。亮とのことも、説教臭い話し方やちょっと小馬鹿にしたような笑い方など感じの良いものではなく、母親らしさが全然感じられなかったところも2人の距離感を感じさせて良かったです。

女優も本当にできるのか？とついつい思ってしまいます。シリアスな場面ではちょっとまだ違和感があります。しかもメンタルクリニックの先生なので、真面目に話を聴いて診察をしているようですが、大丈夫かなと思ってしまいます。