夕暮れに、手をつなぐ

キャラの性格を際立たせる手法として、便利にＬＧＢＴを使い過ぎるのはどうなのかなと思う。正直、意表をつかれはしたが、それでキャラやドラマが深みを増したということもないし、免罪符にもならない。ひと言でいうならば業が深いキャラ。そこを表現できるほど田辺さんの芝居はうまくない。音楽で表舞台に立てば、リストカットや性的マイノリティーなど、いろんなことが表に出てくる可能性は当然高まるわけで、それでも歌を唄おうとした理由や動機が薄い。そもそも複雑な背景を乗っけただけで深堀していない脚本がダメ。キャラも演技も過剰なわりに、足りないものだらけだなと思う。

そこまで線が細いとは思っていませんでしたが、セイラという繊細で壊れやすい心の持ち主を演じているとほんとにか弱く見えてすごいなと思います。震える声で自分を嫌悪するような言葉を言うセイラをみれば放っておくことなどできませんよね。

選曲も良かったと思うけど、歌声を聞いた時点で今までの誰よりも音の音楽に合っているなと感じられたのはすごく良かったのではないでしょうか。詐欺を働いてみたり公園で歌ってみたりキャラ的には好きになれないところもあるけど、なんだか田辺さんが演じると素直にセイラという人を受け入れられるような気がします。

このドラマの登場人物の中で一番好きかも！って思えるくらい良い。音に「一目ぼれした」とか言って近づいてお金を騙し取ろうとしたとか最低のはずなのに、そんな状況でも見た目も心も清潔感の塊みたいなところがにじみ出てるのは、まさにこのキャラクターにピッタリだと思う。
子どもたちの前で歌っている姿は聖母のように美しく、また歌声もとても綺麗だった。ハマり役とはこのことでしょう。