パンドラIV AI戦争

冷たい眼差しや、丁寧な口調ながら相手との距離を感じさせる話し方で蒲生の不誠実さや薄情さ、人間味が全く感じられない雰囲気を丁寧に表現していたと思います。余命を宣告されていたのに実は誤診だったと分かった時の喜びと戸惑いが入り混じったような何とも複雑な表情もさすがでした。

淡々と落ち着いて自分の余命を受け入れているように見えるけど、「そういう人ほど長生きする」という上野の言葉に意味ありげな笑みを浮かべたり、時計の秒針を不安そうに見つめるなど、ふとした表情に死への恐怖とやるべきことをやらねばという焦りが感じられる繊細な演技が好きです。語尾を吐き捨てるような台詞まわしから相手を見下している感じや蒲生の傲慢さが伝わってくるところも上手いなあと感心しながら見ています。

和歌子に謝罪に行くシーンで、彼女の悲しみに寄り添って思いやっているようで、実際は全く心がこもっていない蒲生のクズさが芝居がかった表情や台詞まわしから滲み出ているのが良かったです。頭も良くコミュニケーション能力も高いけど、人として何かが欠けているような不気味さも感じられ、独特の存在感を示していると思います。

鈴木と横山を対面させるために平気な顔をして嘘をついたり、親身になっているような台詞もしらじらしく聞こえたり、彼の人間性を評する台詞がなくてもどのような人物なのか視聴者にしっかり伝わってくる表現力の高さが素晴らしいです。院長から木下の話を聞く時の表情など、医療現場に関しては他人事のような距離感があって、いざとなったら全ての責任を鈴木に押し付けそうな薄情さが感じられるところも良かったです。

一歩間違えると非倫理的な危険な方向に進みかねない、何を考えているか分からないミステリアスな雰囲気がよく出ていてさすが上手いです。物腰が柔らかだし言葉遣いも丁寧だけど言葉の端々や目線に相手を見下しているような傲慢さが滲み出ているところも蒲生の人間性を感じさせて良いと思います。