小吉の女房

番組の始めのころは、20代かせいぜい30代の設定だったと思うのですが、ちゃんとその年代に見えたのはお見事でした。
しっかり者なのに、ちょっと天然でかわいらしい、そんな人物像が沢口靖子さんにぴったり合っていて、はまり役だったと思います。

冷静な演技とはじけた演技の両方に家族への愛情が良く出ていて親しみが持てました。夫のことをよくわかっている、信じている奥さんってこんな感じなのかなぁと想像できるくらい表情に温かさがにじみ出ていてよかったのですが、さすがに江戸時代でもここまでものわかりのいい人はいないだろうという気もしました。感情を抑えているようなしぐさや表情ももう少し欲しいと思います。

年齢を重ねるごとに演技力に磨きがかかってきているなあと感じさせる今回の時代劇ドラマでの女房役。刑事ドラマなど現代ドラマとは異なり、女性としてのしなやかさ、優しさ、母親としての深い愛情表現、ちゃんとしたお役に就けない旦那の良いところを理解し、一生懸命支えようとする内助の功を実にうまく表現出来ていると思います。日本髪の姿も良く似合った美しい女優さんの作品を是非見てもらいたいと思います。

沢口靖子さんのファンですので、大概のドラマ作品は見てきましたが、最近は科捜研の女シリーズに代表されるような知的で目線の厳しい役が印象に残っていました。今回の小吉の女房では日本髪が良くお似合いで、沢口さんの美しさが一段と光っているように思います。また頼りない旦那様を支える貧乏武士の妻役では「しっかり女房」でありながら、お姑さんとの距離を上手く保ちながら、旦那様を一生懸命支えようとする内助の功が上手に演技されており、時代劇の古めかしさを感じない、爽やかな印象を残す演技となっていると思います。

最近少し「劣化」のうわさを聞いたのですが、全然そんなことはなく、着物が似合う素敵な姿でした。朗らかであまり物事に動じない武家の嫁を好演していて、これでは家付きのうるさい婆がいても養子に来るな、と思ってしまいました。久しぶりに「科捜研の女」以外の沢口靖子が見られてうれしかったです。