少年寅次郎

まず江戸弁が下手だった。話し慣れない方言に感情を載せるのは難しいのか、異様に下手な演技に映った。あまりに下手に感じたため、彼の評価をネットで調べると「演技派俳優」とされていることが多かったため、本当に驚いた。
このドラマ、この役では、そして渥美清の寅さんを好んで見ていた私には、彼は下手だった。

演技が単調だったと思いました。遊び人で仕事もしなくて寅次郎に冷たくあたるどうしようもない役でしたが、もう少し変化はつけられなかったのかなと感じました。戦争から帰った時だけは落ち込んでいましたが、すぐ元にもどり、依然と全く変わらなかったので、少し残念でした。

風貌と言い、口調と言い、敵意に満ちた流し目と言い、憎まれ役にぴったりでした。特に、光子がなくなって葬儀が終わった夜、平造が酔っ払って寅次郎に向かって、「おい兄ちゃん！」とあろうことか他人行儀に寅次郎を呼びすてにして、あの時、冬空の下で救われていなかったら死んでいたんだと寅次郎に、食ってかかった時に、母親を失って失意に落ち込む寅次郎が平造を殴って家出する場面は見ているこちらも、ふつふつと湧き上がる怒りを抑えきれないくらい、見事な演技でした。

イケメンも台無しのクズ中のクズをここまでよく演じました。どこも１つも良いとこないのにあの菩薩みたいな奥さんに愛されているのが不思議なんだけど、夜中奥さんが死んでしまうのが不安で顔を覗き込む姿が幼い少年のようでもあり可愛らしく、あーこういうとこが愛されていたのかもなと思わせる素敵な演技でした。

寅さんの面影は、この方の演技全てに感じられた。
オカカを餌にしたら、のアドバイスで、救われました。光子さんに、済まないとの気持ちで、寅ちゃんを素直に可愛がれなかったのだろうな。

誰が見てもクズな男。痩せこけて嫌味言ってほんとに嫌な男だねー。実の息子にあんたが辛く当たることないじゃないか、寅ちゃんに1発殴られて当然だよと思わせる思いっきりの嫌われ役。そんな中でも大人になった寅さんがまくし立てるように喋る元祖はお父ちゃんだったのかとか女にデレっとしちゃうのはお父ちゃん譲りだなとか、また微かな伏線を張っているようで目が離せない。

寅次郎に自然に意地悪な言葉を言ったり、舌打ちをするときの嫌な顔がインパクト抜群で印象的。見ている方が腹が立ってくるほど上手いと思う。また、戦地から帰ってきた時の怯えた様子もとても伝わってきて良かった。

中身はダメダメなイケメンお父ちゃん、ダメだけど嫌いになれないなんだか味のある人だねー。気が人一倍小さい男が戦場に行ったらそりゃおかしくなって帰ってくるよね。あの怯えた目を見て痛感。ただお父さんが出張で違う場所で仕事してたのとはわけが違う。口にも出せないくらーい闇をよく表現していたと思います。