6秒間の軌跡 花火師望月星太郎の憂鬱

橋爪功さんとの掛け合いがよく見ていて楽しかったです。2人きりの親子もこんなに楽しく過ごせていたなら亡くなった時の喪失感は計り知れないでしょう。少し拗らせた感じも変に幼くなったりあざとくなったりしないで大人の拗らせ方をしていました。

お母さんの話になると別れた時の小学生の気持ちに戻ってしまうのか表情も幼くなるのが印象的でした。お母さんと再会して分かってもらえるか試すような表情、抱きしめられて嬉しいのと驚いたのと許していいのか迷っているような表情。一つ一つが繊細でいろんな感情が見えました。

いい大人なんだけど子供の頃の話やお父さんの話になると星太郎さんが小さな子供のように見えてくる時がある。少し拗らせているようにも見えるけど、みんな見せないだけでそういうところもあるかもなと思います。お父さんがいなくなった時の焦った顔がとても真剣で迷子の子供のようで切なくて愛おしかったです。

星太郎さんの涙の告白が素晴らしかったです。取り乱しながら絞り出すように子供の頃に受けた傷を告白するところはほんとにすごかった。今でも口に出すとまた傷ついてしまうような苦しみも誰にも知られないようにしまっていた心の奥から引っ張り出す苦しみも感じられました。

いい歳した大人だからこそ親が死んだって一人で寂しいとしくしく泣いているわけにもいかず、だからといって元気も出るわけでもなく少し荒れた部屋と力なく笑う顔が哀愁を誘います。言葉に出さなくても寂しさがひしひしと伝わります。