エンジェルフライト

子供を愛せない役はとても難しいと思いました。自転車が線路に挟まって動けなくなった娘を助けることもせず悲しそうに見つめる顔、自分で脱出してきた娘の肩を抱きながら涙する顔。多分娘が死ぬなら死んでもいいとさえ思っていたのでしょう、そんな自分が悲しかった顔。忘れられません。

世の中は親は無条件で子どもを愛するはずだと思っているようだけど、親は最初から親ではなく、親になっていくもの。だから塔子のように子を愛せない親だっている。「当たり前」という言葉や反応は案外、人を苦しめるもの。だからといって娘を見殺しにしようとした姿は、親としてというより、人としてどうかと思うけどね。でもだからこそ自分でも自分は愛されるべきではないと、娘に厳しく当たる面もあったのだろうね。

草刈さんの芝居ですが、本当に憎たらしいと感じるほどの演技です。ボーボワールじゃないけど、「人は女に生まれない」ことを理解しているのでしょう。草刈さんの知性がしっかり感じられるなと思います。