フェイクマミー

今回は聖子とのシーンが多くてどれも印象深かったけど、特に隣同士で寝るシーンがとても良かった。ふいに差し出された聖子の手に優しく重なる手、聖子の満足そうな微笑みを見て嬉しそうに笑いかける姿、微笑む聖子の目からツーっと涙が流れた時の一瞬だけ眉間がキュッとなる表情、一緒に過ごせる幸せを噛みしめつつ、もしかしたらもう先は長くないかもと悟ったような、切なさと覚悟が伝わってきて胸にくるものがありました。

竜馬の手がちょっと触れただけで動揺して動きがぎこちなくなったり目が泳いだり、意識してますって分かりやすく出てしまう不器用さがピュアで可愛かったです。璃子ちゃんを捜索する時に冷静で的確な指示を出す姿も頼もしくて格好良かったです。

母親に褒めて貰いたい、「頑張ってるね」って言って欲しかったって泣き出す姿が、しっかりしていて頼もしい偽ママの時と別人のように幼く見えたのが印象的でした。今の自分を分かってもらおうと勇気を振り絞って思い一つ一つを丁寧に言葉に落とそうとしているのも、偽ママは犯罪なんだという自覚も、どちらも伝わってくるから余計に切なくて胸が痛かったです。

竜馬の相談に乗るシーン、「心臓？」ってちょっとズレた解釈したり、竜馬が良い話してるのに遮ってビールを飲んだり、なかなかのマイペースっぷりがクスッと笑えるチャーミングさがあって良かったです。「茉海恵さんには竜馬さんが必要」「誰かに言って貰わないと自分の価値を信じられないんですか」という言葉も、はっきりとした強めの口調が単なる気休めではない薫の本音なんだと感じさせて良かったです。

納得のいく説明がなければとことん議論したり、九条の頭を下げさせたいという思惑を見越して手伝いをきっぱり断ったり、委員決めの時からブレない真っすぐさが見ていて気持ちが良いです。こうやって薫の正直さや素直さを丁寧に見せてくれるから、シラを切り通せたかもしれないのに佐々木に偽母のことを打ち明けたり、本橋の夫にも「前世の上司」なんて匂わせな嫌味を言ったり、もっと慎重に行動しなよってハラハラさせられるシーンも、もともと嘘や誤魔化しが苦手な人なんだよなあって説得力があって良いと思います。

出身大学を聞かれて東大ですとあっさり答える。聞かれたから答えただけというシンプルさがより賢くみえてボスママもこれじゃ太刀打ちできないなと息を呑んだはず。いろはとのダメダメだったピクニックも最後までへこたれず今できる最善を探す姿に賢さが出ていた。

いろはと二人きりのピクニック、子供と遊ぶのが不慣れでぎこちなくて空回り気味だったけど、その一生懸命な姿から何とかして元気のないいろはを楽しませたいという薫の思いが感じられました。マミーって呼ばれた時の少し照れ臭そうな、しみじみ嬉しさを噛みしめるような表情や作文を読んだ時の涙など、いろはへの愛情や母性の芽生えが感じられたのも良かったと思います。

母親が接する距離感とは違ういろはと薫の距離感が心地よい。1人の人間として丁寧に接していて母とも先生とも違う微妙な位置を自然に演じているのがすごいと思う。三羽ガラスとどう対峙していくのかも今後の見どころかな。

行事委員を押し付けられそうな本橋を助けたり、「同調圧力は見過ごせない」とはっきり言い放ったり、困っている人を放っておけない真っすぐさや権力に屈しない芯の強さが薫らしくて格好良かったです。いろはに佐々木の顔をずっと見ていたと指摘された時にムキになって否定する姿や、初恋相手ってバレた時のフリーズした表情も、時折見せる分かりやすくてちょっと子供っぽい反応が聡明でキチっとした普段の顔とギャップがあって可愛らしかったです。

低く落ち着いた声や、幼稚園児相手でも敬語で話し「いろはさん」と呼ぶ丁寧できちっとした姿が、薫の生真面目さや育ちの良さを感じさせました。いろはを変に子供扱いせず、大人と同じように接して真っすぐ向き合うところも、いろはが「他の人とは違う」と信頼して心を開く説得力があって良かったです。最初はポーカーフェイスでクールな人かと思ったけど、エージェントとのやりとりや茉海恵が家庭教師の依頼をするシーンなど、ちょいちょい思ってることが顔に出てしまっていて、そういうちょっと隙があって素直な姿もチャーミングで親近感が沸きました。