フェイクマミー

杖をつくだけじゃなくてその杖にすごく体重をかけているところとか言葉を発するのも弱々しいだけじゃなくて息切れしているところとか、本当に具合が悪いんだなと分かるしリアルだなと思った。初めて自分のことをおばあちゃんと呼んだ時の周囲を窺う顔がチャーミングで良かったです。

自力歩行が難しくなっていく姿や、息が漏れるような掠れた声、一言一言絞り出すようなゆっくりとした話し方、徐々に弱っていく過程がとてもリアルで、見ているのがちょっとしんどくなるくらいでした。茉海恵の料理を食べた時のリアクションや、薫へのビールのおねだり、無意識に一人称が「おばあちゃん」になった時の照れと戸惑いが入り混じった表情、日高親子と過ごす中で頑なだった心と思いが少しずつ融けていく様子もとても自然で、手紙のシーンに唐突さを感じさせないところもさすがだと思いました。

薫から偽ママの話を聞くシーン、表情の変化や反応に時差があるというか、この子は何を言ってるんだろうって理解が追いついていない感じがリアルでとても良かったです。どれだけ本人が意義を感じていても、やってることは犯罪なんだし、薫のこれまでの努力やキャリア、将来を思えば母として相当ショックだったろうなって観てるこちらも胸が痛かったです。

悪気は全くないんだろうけど、チクっと刺さる無神経なことを口にしてしまうところがリアルで良かった。子供のころからエリートまっしぐらの薫が誇らしくて自慢だったのだろうし、だからこそ「なんで」ってもどかしい気持ちや心配が強くなってしまうんだろうなあって、短いシーンの中で聖子の親心がしっかり伝わってきたのも良かったと思います。