恋は闇

終盤まで真犯人候補者になっていたし、そこまで怪しげに引っ張りながら、結局は万琴をマジで思いやる親友でした。だからこそ最後はハッピーで良かったね。

もちろん演出の成功もあるのですが、その要求に答え、最後まで真犯人候補から外れないように演じつつ、ちゃんと万琴を心配する姿が不自然ではないバランスのとれた芝居を見せた森田さんは見事だったと思います。ファインプレー賞です。

病院で大和田さんに引き止められる、その一瞬の顔が不自然に強張っているように見えてあれ？怪しくない？って思ったけどまんまとやられたね。さすが芸達者。ストーリー的にどうしてもヒロキばかりが怪しくなってしまうのをいい感じに止めてくれました。

モダモダしてる正聖に「好き」って間髪入れず先に告白しちゃうのも、正聖の告白を目をパチパチさせて口をポカンと開けて聞いてる表情も、嬉しそうな満面の笑みも全てがチャーミングで微笑ましくて、涙と緊張でキュっとなってた気持ちをホッとほぐしてもらえました。二人の今後も見てみたいなあって思える、見てるこちらまで幸せな気持ちになるような、ほのぼのとした雰囲気も良かったです。

万琴を好き勝手叩く世論にめちゃくちゃ怒ったり、泣き出したり、万琴に寄り添って辛さやしんどさを共有する姿は本物の親友にしか見えなかったけど、スペアキーを借りたり、万琴の血液検査の結果を再び見てたり、犯行日に夜勤を抜け出してどこかに向かってたり、最終回直前で怪しさ満載な姿をこれでもかって見せてきていつも以上に存在感がありました。善悪、どちらとも取れそうな絶妙な表情や口調もさすが上手いなって思います。

設楽と対峙するシーンで見せた苛立ちと強い疑念が滲む表情や早口気味の口調が、普段のおっとりした姿とギャップがあって、それだけ万琴のことを心配してるんだなあって伝わってきたのが良かったです。設楽が耳元まで近づいてきた時にギュッと自分を抱き締めるように身体に緊張が走る姿も、いまだに若い男性が怖いという向葵のトラウマを思わせて、それでも万琴のために勇気を振り絞ってあの場に行ったんだなあって万琴を大切に思う気持ちが感じられたのも良かったと思います。

万琴との喧嘩シーン、辛い場面ではあったけど視聴者が万琴に対して思っていることをズバっと代弁してくれてスッキリしました。「私の言葉も届かないの？」と問う時の震える声や悲しげな表情も、心配する気持ちだけではなく、浩暉しか見えていない万琴へのもどかしさや苛立ち、不安が滲んでいてとても印象に残りました。

小峰が好きでそれよりももっと万琴が好きな向葵。2人がくっついてくれるなら気持ちよく身を引こうと画策する姿が健気でいい。振られてしまった小峰の腕を掴もうかどうしようかの手だけの演技も切ない。でも最後に見せた顔で一気に違う印象に！それこそ森田さんを起用した理由だろう。

万琴に振られた正聖を見て、自分のことのように辛そうになる表情も、正聖に触れようとするけど出来なくて彷徨う左手も、彼を想う気持ちが溢れていてすごく切なかったです。病院で大和田に呼び止められた時に見せた意味深な表情が普段の向葵とは違う冷たさのようなものを感じさたのも、ミスリードかもしれないけど普段のほんわか愛らしい姿とギャップがあって印象深かったです。

浩暉に「加害者もずっと自分が犯した罪に追われて生きていけば良い」と語るシーン、声のトーンも低く表情も冷たく、向葵の闇の部分が垣間見れた気がして印象深かったです。おっとりした雰囲気でいつも笑みを絶やさない子だから、余計に何年経っても消えない心の傷の深さと加害者への憎悪・恐れが際立って感じられたのも良かったと思います。

ご飯を持って万琴の家まで来てくれたり、「何やってるのよ」ってちょっとお説教モードになったり、心配しつつも腫物を扱うみたいに過剰に気遣うのではなく、いつも通りに明るく接する姿に見てるこちらもホッとさせてもらいました。今回はヒリつくシーンが特に多かったから余計に向葵のほのぼのまったりした空気が沁みた気がします。

設楽の顔を見た時の意味深な反応が印象的でした。設楽の反応的に面識がある感じではなかったから、向葵が一方的に顔を知ってる感じなのかなあ。設楽の出身地とか年齢とか、ランチの時に万琴が「何も知らない」って嘆いていたことをさらりと質問してアシストしてあげる姿もさすが親友って感じで頼もしかったし、何気にキノピーと意気投合してる姿も可愛らしかったです。

正聖が来た時に鏡を見て髪の毛を直す姿や、仲良さそうな正聖と万琴のやりとりを目の当たりにした時の何ともいえない笑み、正聖が守ってくれた時の嬉しそうな笑顔、言葉に出さなくても表情や仕草から正聖への切ない想いが伝わってくるところが良かったです。

設楽の愚痴でヒートアップする万琴を慣れた感じでほんわかあしらう姿が万琴との付き合いの長さや仲の良さを感じさせて良かったです。男性客が近づいただけで体が強張って動揺する姿も、向葵のトラウマや心の傷の深さが伝わってきて、犯人が捕まり、報道されなくなって世間から忘れ去られても、被害者には一生事件がつきまとうという事実を改めて認識させられました。