くるり～誰が私と恋をした？～

いつも千草さんのことを気にかけていていなくなると必死に探したりしているけど、千草さんの前では悲壮感はなくいつでも穏やかで温かい。兄と紹介されても動じずそれ相応の距離感を保つ。病気の千草さんが笑顔でいられるように大事にしている様子がとても素敵だ。

「千草さん」と呼びかける時の柔らかく温かい声や、目がなくなっちゃうくらいニコニコと幸せそうな笑顔がとても素敵。忘れられる辛さや苦悩は完全に消え去ることはないんだろうけど、どんな形でも千草とただ一緒にいられるだけで嬉しくて幸せなんだろうなって伝わってきて、切ないんだけど温かい気持ちになれる。ベテランの片平さんがお相手でも全く違和感のない見事な演技で、愛情に溢れた素敵な夫婦愛を見せてもらえたと思います。

肥後さんのちゃんとした芝居を見るのは初めてだと思うのですが、そこはかとなく優しい雰囲気とその背後に隠れた強い覚悟のようなものが感じられて、とても良かったなと思います。医師としての目と夫としての目と、それぞれの立場と感情が混じり合い、記憶がまばらな妻を思う心が伝わってきます。悲しく切なくもあるけど、基本はとても優しく穏やか、でもやはり残酷な現実。それでも寄り添い合う2人がいたから、まことの心の目が開いたのかもしれません。

いつも一定で温かみがある喋り方は人を安心させ、こんなクリニックなら通いたいなと思ってしまう。千草さんのことも大きな愛で包んでいて理想だなと思う。千草さんが旦那さんと認識した時の嬉しそうな顔が忘れられない。

千草に「あなた」と呼ばれた時のハッとした表情、喜びを噛みしめるように頷きながら涙する姿、これまでどんな思いで彼女の傍にいたのか。どれほど彼女を愛しているのか、井口の気持ちが痛いほど伝わってきてグッときてしまいました。千草と手を繋いで歩く姿や、二人寄り添って楽しそうに話す後ろ姿もとても自然でしっくりきて、幸せそうな仲睦まじいご夫婦の姿が微笑ましく、切なくなりました。

まことに「千草さんに変わらず接してくれてありがとうございます」とお礼を告げるシーン、笑顔も声のトーンも本当に優しくて温かくて、自分の大切な人を大切にしてくれるまことへの深い感謝の気持ちが伝わってきたのが良かった。直接言葉にしなくても千草のことが何より大事で愛しい存在なんだなって感じられたのも良かったと思います。

転がって来たボールを拾ってあげる千草を見つめる眼差しがとても良かったです。自分のことは忘れられてしまったけど、千草の笑顔や優しさは全然変わっていないことを改めて実感しているような温かさや愛しさが溢れていてグッとくるものがありました。

おっとりと穏やかな雰囲気だけど、何でもドンと受け止めてくれそうな懐の深さや頼もしさもあって、この人になら何でも話せそうだなって自然と思わせてくれるところが良いですね。千草とまことのやりとりに気付いて間に入ってくるシーンも、慌てて取り繕うような様子もなく落ち着いていて、さすがだなと思うのと同時に、こういった患者とのやりとりが頻繁に起こっていて慣れてるんだろうなという切なさを感じさせて印象に残りました。

「私が忘れられる方で良かった」という言葉がやけに重いというか、しみじみと実感が籠っているように聞こえたのが印象的でした。心からそう思っているのが伝わってきて、井口の優しい人柄が感じられたのも良かったし、薬指の指輪を切なそうな笑みを浮かべて見つめるシーンも相まって、井口も何か秘密を抱えているんだろうなという空気がより鮮明になったのも、ドラマのストーリーを盛り立てていて良かったと思います。

話し方や声のトーンが、森本レオさんに寄せてるように見えなくもないけど、穏やかで優しい笑顔がホッと安心出来る雰囲気を醸し出していて、メンタルクリニックの先生にぴったりだと思います。まことの不安や恐怖にそっと寄り添う姿も素敵。役者さんとして違和感なくドラマの世界観に溶け込んでいると思います。