魔物(마물)

凍也を恐れて匿ってもらってるはずなのに、彼が訪ねてくると気になって様子を見に行ってしまう姿が以前話していた「あの二人は絶対に別れない、特別な関係」という潤の言葉に説得力を持たせていたのが良かった。怖がって逃げながらも関係を切り離せない姿がもどかしくもあり、どうしてこんなに強い結びつきが芽生えたのか好奇心を掻き立てられるところも良かったと思います。

あやめと陽子との食事シーン、甘ったるい声と笑顔でチクチク嫌味言ってマウントとる姿があまりに上手くて笑ってしまいました。ピリついた空気で怖いしネチネチしてて嫌な気持ちになるけど、お三方の芝居が見事でつい見入ってしまう。あやめの発言にイラっときた様子なのに微笑みを絶やさないところも、妻のプライドが感じられて良かったです。

また私のことをバカ扱い！とあやめにくってかかるところが好きです。武者震いするような心の底から嫌悪するような、それでもあやめにすがならきゃいけない自分をも嫌うような心から吐き出す思いがドバッと出る感じ、夏音の全てがそこにある。

あやめのオフィスで「また私を馬鹿扱い」って激昂して自殺しようとするエキセントリックなシーンも迫力あってめちゃくちゃ見応えあったけど、１度目の訪問時の、甘えるような穏やかな猫なで声でチクチク牽制していく様がより夏音の内で燃える激しい嫉妬や凍也への強い執着を感じさせて怖かったです。かなり激しいけどやり過ぎて浮いたりコントみたいにならない絶妙な匙加減も上手いなと思いました。

凍也に写真を見せないでと刑事に頼む時の必死な表情や腕に縋りつく仕草が、絶対に彼にはバレたくないという恐れと焦りを感じさせました。この短いやりとりだけで凍也のヤバさをほんのり滲ませるところもさすが。凍也との執着に近い異様な愛や、盗みをはたらく瞬間の表情や間など、常に危うくて不安定で見ていて心がザワザワするような雰囲気を纏っているところも良かったです。

「凍也とは結ばれる運命だった」と語る時の熱に浮かされたような口調や、釈放された凍也にしがみつくようにきつく抱きつく姿など、夫への愛が強めの妻というだけではなさそうな、依存や執着などドロリとした重さを感じさせる演技が良かったです。あやめと凍也の関係を知ったらどうなるんだろうって、その豹変ぶりが恐ろしくもありどんな芝居を見せてくれるのが楽しみでもあります。

とにかく感に障る演技が上手い。何気ない会話を振りながら確実に相手にダメージのある言葉を残していくところや、あなたにはできないでしょという勝ち誇った目つき、ターゲットになる人にだけ分かる嫌がらせは天下一品。見ているとザワザワしてしょうがない。

あやめへの既婚者マウントとか、名田へのボディタッチとか、同性に嫌われる女性の演技がすごく上手いですね。甘い口調や意味ありげな視線、そこにチクっと紛れさせる棘と陰湿さ、実際にこういう人なのかな？って思ってしまうくらい自然で良かったと思います。