魔物(마물)

奥太郎が事切れた後の演技が圧巻でした。悔しさや苦しさ、憤り、惨めさなど色んな感情が入り混じったような何とも言えない表情と静寂に響く笑い声が言葉に表せない陽子の複雑な心情を物語っていて、見ていてズシンと心が重たくなる心地がして見応えがあり、とても印象に残りました。

優雅な笑みを浮かべながら朗らかにマウント取ったり嫌味を言う姿がめちゃくちゃ怖くて、大声で罵り合ったり暴れたりするよりよっぽどインパクトがありました。修羅場過ぎるし、そもそもこの食事シーン自体が唐突で下手するとコントっぽくなってしまうけど、しっかりとドラマのワンシーンとして見応えのあるレベルに持ってきてるのもさすがだなと感じました。

あやめのことが気に食わないんだろうね。一つもいいこと言ってないのにふんわりとした雰囲気で帳消しにするすごさ。上げたり下げたり自分の都合に合わせて態度を変えているのに声色は変えない怖さ、女性の陰湿さ大集合って感じがさすがです。

あやめに取った失礼な態度がまるでなかったかのように、親しげににこやかに接する姿が怖い。相当神経が図太いし、彼女のことを下に見てるからこそ出来る振る舞いなんだろうなって、陽子の人柄が感じられたのも良かったです。

暗い部屋で写真を燃やしてるだけなのに、炎に照らされる表情に嫉妬や情念が滲んでいてものすごく印象に残る。インタビューを受けるシーンも表情や言葉すべてが白々しくて嘘くさくて、「最愛の夫を亡くした悲劇の妻」を演じてる感が出ていて良かったと思います。

潤が初めて凍也を自宅に連れてきた時の値踏みするような視線が怖かったです。表面上愛想がよくて笑みも浮かべてるから余計に利用価値があるかどうか無意識に判断してる感じが際立っていて、その視線と表情だけで最上の人間性が感じられたのもさすがだと思いました。

自分の都合のいい時だけ機嫌がいい人っているんだよね。頼み事をする時には猫撫で声であなたがいて良かったわなんて褒めておいて、相手が調子に乗ったと思ったら手のひらを返すように冷たい言葉を浴びせてくる。女って怖いと心底思った。

散々あやめに頼って持ち上げてからの「もっと分別のある人だと思ってた」「生きている世界が違う」発言が最上の人間性と特権意識の強さを感じさせました。夫に拒絶された時にトマトを握り潰したり、手すりを叩いたりとヒステリックな行動をとる姿も、頭に血が上ると何をするか分からない危うさが感じられて良かったです。