無能の鷹

農業を始めるという鳩山の話に「良いじゃない！何作るの？」ってワクワクした表情で食いつく姿が良かったです。新しいことを始める時に、こんなふうに前向きに応援してくれる人がいるってすごく心強いだろうなあ。ぶりっ子口調で媚びてくる烏森を「私そういうのいらないタイプだから」ってバッサリ斬り捨てる姿も格好良かったです。

朱雀との食堂でのやりとり、息ぴったりで分かり合ってる空気感があって、鶸田が思わず余計な一言をつぶやいてしまう説得力がありました。ズバズバ遠慮のない物言いも、長い付き合いで信頼関係をしっかり築いているからこそなんだろうなって伝わってきて良かったし、朱雀と言い分が分かれて結局真実はどっちなの？！ってなる有耶無耶な感じも面白かったです。

久々に出社した燕谷に「画面越しじゃない実物の顔が見られて嬉しい」と声をかける時の表情が本当に嬉しそうで、社交辞令でも出社させるための方便でもなく、心からの言葉なんだろうなって伝わってきたのが良かった。鳩山とジャンケンするだけなのに学生みたいに盛り上がって楽しそうな姿も、二人の仲の良さや同期ならではのリラックスした空気感が感じられて微笑ましかったです。

回想シーンの甲高い「はい！」っていう返事や、初々しさをちょっと誇張した芝居が面白かったです。やり過ぎない絶妙なバランスもさすが。「あなたは変わった」と目を潤ませながら部長に告げるシーンも格好良かったし、昔交わした約束を果たす時がきてしまった切なさや、はっきり伝えられてスッキリした気持ち、色んな思いが伝わってきたのも良かったと思います。

女性初の大出世！と言われても嬉しくないんだろうなって顔がリアルです。真面目に仕事をしてきただけなのに、たまたま運よく席に座っちゃったという居心地の悪さが出ています。鵜飼の愚痴を聞きながらそっととりなすところがいい人なんだろうなと思いました。

朱雀のジェンダー意識ゼロの無神経発言に引っかかるたびに、顔が引きつったりジロっと睨んだり、苛立ちを抑えるように口元をギュッと結んだり、何とか感情が出ないようにしている姿が色々と神経を使うポジションの鴨石の気苦労を感じさせました。モノローグがなくても心情がありありと伝わってくる豊かな表情の演技が素晴らしいです。

鳩山にグチりつつ、「優しいだけじゃ人は育たない」「優しくすれば良いってもんじゃない」とアドバイスしたり、グータッチをして励まし合ったり、鳩山との同期愛や絆が感じられたのが良かったです。鳩山にも話を聞いて寄り添ってくれる人がいるんだなあってホッとしました。怒っているシーンが多いけど、病院でのやりとりを見て、鴨石も慣れない部署で気を張って必死に頑張ってるんだなって感じられたのも良かったと思います。

電話シーンでの「なるほど」連発、本当に7種類全部言い方が違っていたのが凄い。あんな短いシーンもしっかり見せ場にして存在感を残すところもさすがです。「シネ」のコピーの束を持って営業部に怒鳴り込んでくるシーンも、鴨石の怒りっぷりとシレっとした鷹野の態度との対比が面白かったです。