ナイルパーチの女子会

人として、そして女としての怖さをこれほどまでに感じたドラマは初めてでした。男性にはわからないような複雑な女性心理や、会社員としての感情、専業主婦としての感覚など、たくさんのことが盛り込まれていて、毎回自分の心の内を問われているようでした。人間の裏の顔、表の顔、そして男女の関係の本質などをとことん突き詰めたストーリーだったと思います。どちらかと言うと女性の方が気に入りやすいドラマだと思いますが、男性もみると勉強になるかもしれません。

女友達に執着する栄利子の心の闇・・・常軌を逸しているように感じるけど、自分にも同じところがあるなって共感した。恋人じゃ満たされない部分ってあると思う。翔子は栄利子を拒絶したけど、結局自分ものりさんに同じ行動をとってしまう。ちょっとした寂しさやストレスで歯車が狂った時、誰でもストーカーになってしまうような心の闇が存在するんだろうなって考えさせながら毎回引き込まれていく内容だった。生態系を壊してしまうような強い魚ナイルパーチが栄利子なんだって思って見てたけど、私は高杉真織のような女子に好かれる女子の本性の方が怖かった。

いろいろ急激に展開し過ぎというか、一気にまとめすぎて白ける感じ。栄利子もまるで憑き物が落ちたかのように、急にまともな人になってるし、圭子とも突然の本音トークというかいきなり和解？　そこに至るまでの心理描写が一切無くて、唖然としてしまう。栄利子が目を覚ますきっかけになったのは、たぶん真織のあの強烈な言葉だろうけど、その彼女と杉下の関係もどうなったのかが描かれてない。婚約者とはいえ、あれだけのケガを負わせたんだから、あの二人の顛末が気になる。

ドラマの映像が美しい。色、角度、お金持ちな家のインテリア、団地住まいの夫婦のリアルな室内とかもいい感じ。日本のドラマでこんなに質の高い映像ってあまり無いなと思った。映画っぽくていいです。それとリモート会議の表現方法がすばらしいと思った、考えた人の才能すごい。水川さんの演技がいまいちで残念。もっと不穏な雰囲気を纏える演技ができる人で見たかった。

嫌なことをなかなか嫌だと言えなかった翔子が、ついに栄利子にはっきりと最後通牒つきつけたのは良かった。けど、自分がNORIさんに対して、栄利子からされてきたこととソックリ同じことをしてるのに気づかないって、なんか怖い感じ。どんな人でも、自分自身のことはなかなか客観視できなくて、誰もが栄利子みたいになる可能性を秘めてるってことかな。
それにしても、栄利子が写真を消去したんだから黙ってればいいのに、なんで翔子は自分の浮気をわざわざ賢介に告白したんだろ？　自分を甘やかしてくれる賢介なら、その程度のことは軽く許してくれると思ってたとしたら、翔子は彼を見くびってる。案外この二人はあっさり離婚するかもという予感。

前回翔子の弱みを握った栄利子が、その弱みを使って親友でいるように脅迫していくという、狂気に満ちたという表現がぴったりの栄利子にどんどんはまっていきます。
人との距離感というのはここまで分からなくなるものかと、このドラマを見ていてつくづく考えさせられています。
相手に拒絶されても、されてもなお自分に良いように解釈して、また距離を詰める。正に今「怖いもの見たさ」でこのドラマを見続けています。
翔子はただ自分の言いなりなっていたらいいという台詞が、これまた怖くてこの二人がこの先どのようになっていくかが怖くもあり知りたくもあります。

翔子の弱みを握ってそれで脅すようにして、仲良しごっこをしたがる栄利子の気持ちはサッパリ理解できない。この世の終わりみたいに鬱陶しい顔つきの翔子を、無理やり旅行につれだして何が楽しいんだろ？生きてきた世界が全然違うからか、話も全くかみ合ってないし盛り上がりもしない。でも栄利子って結局は他人を自分の思い通りに動かしたいというだけで、相手の気持ちが自分に向いてるかどうかなんてどうでもいいんでしょうね。
ブログの書籍化の話もなくなって翔子は気の毒な気もするけど、あのグダグダした優柔不断な煮え切らない性格が招いた結果とも言えるかな。それにブログなんてそもそも止めてしまったところで、彼女が失う物なんて何もない。何よりあの、娘を溺愛する父親みたいに彼女を深い愛情と思いやりで包んでくれてる優しい夫がいるんだから、それだけで十分幸せでしょ。

真織に命じられた（？）ことを愚直に、栄利子が実行しようとしたことに唖然。相手がたまたま、まともな理性の持ち主だった岸田さんだったから、何ごとも起きなくて良かったけど。岸田さんって、ルー大柴もどきの奇妙な喋り方でヘンな人かと思いきや、人としても上司としても極めてまともなみたいで見直した。
栄利子のように病的に壊れてる印象はないけど、真織もたいがい酷い感じ。どんな育ち方をしたらあんな風に下品な言動ができるのかと呆れるけど、ああいう人が子供を産んで育てるということもある意味恐怖。
それにしても、翔子が水族館に居ると分かった途端にかけつけた栄利子は、やっぱり完全にストーカー。ちゃんとカウンセリングでも受けて治療したほうが良さそうね。

賢そうなのは見た目だけで実際の栄利子の中身は、翔子のブログに張り付いて誹謗中傷を書き込み続けたりと、やることが愚かすぎる。一方で、杉下が派遣の子といきなり結婚することになるとは、予想しなかった展開。真織とは話も合わない、つまらない女だとバカにしてたのにどういうことかと思ったら、案の定デキ婚。真織のほうも本気で杉下が好きなわけじゃなく計算尽くなのは見え見えだから、二人がどんな結婚生活を送ることになるかは想像するまでもないのに、ここでも栄利子はわざわざケチをつけにいって、ヤブヘビになるとは愚かな感じ。それにしても栄利子は本気で真織の命令を実行するつもりなの？　

栄利子は仕事も出来て聡明な感じなのに、こと女友達に関しては距離の取り方が分からないみたいね。それがまあ、ストーカーと言われてしまう所以でしょうけど。確かに、知り合ったばかりの翔子に対する付きまといぶりは、病的。翔子のほうも、栄利子を疎ましく感じてるなら思いっきり強く突き放せばいいのに、結構うだうだと優柔不断な態度を取ってるところが、見ていてイラつく感じ。栄利子も翔子も友達がいない者同士、どこかで通じるものが合ったりするのかなぁ。それにしても、やっぱりネットを通じて人と知り合うのは、あらためて怖いものだと感じた。