シッコウ!!～犬と私と執行官～

正直、酔いしれた演技が嫌いです。いつも感じます

ひかりとのやりとりが絶妙で面白かったです。おじさんネタを振られてもウィットにとんだ返しで余裕を見せ、全然物悲しくならなかったのも良かったです。意地を張るようなところもかわいらしさがあって面白かったです。ひかりを恋愛対象じゃなくて親友対象にしたところがいやらしさを消してくれてよかったです。

執行が中止になって落ち込んだり、拗ねて吉野や栗橋に八つ当たりしたり、吉野の喝を素直に受け入れて立ち直ったり、大人なんだけど変なプライドが一切なくて素直に感情を表すところがチャーミングで素敵です。ちょいちょい子供っぽい姿を見せるからか、吉野との年齢差があまり気にならず、本気で親友だって思ってるんだろうなって感じられるのも良かったです。

織田さんって、トレンディ系とか某刑事ドラマの印象が強いし、最近はあまりドラマに出ていないので、果たしてどうなるのかと注目していました。小原というキャラについてはおじさんのわりに、案外子どもっぽいところがあるなと思う部分もありましたが、それは脚本の問題。芝居としては普通ではないけど、どこかにいそうなおじさんという雰囲気が悪くないと感じました。セリフ回しはちょっと水谷豊さん演じる「相棒」の右京さんを参考にしているのかな。いずれにせよ良くも悪くも織田裕二も役者として年を取ったんだなと思いました。

ギラギラしていた若い頃より今の方が好きかもと思っています。心にも丸みが出て少しの嫌味も受け流したり、そう言った相手の気持ちを考えて慮ったりする余裕が感じられていい歳の重ね方をされたなと思いました。恋人じゃなくて親友になりたいってところもかわいらしくていいですね。

吉野にプレゼントを渡す時の、照れ臭くてずっと横向いてる姿や「現在進行形でモテてる」とムキになって言い返すシーンなど、吉野相手だとおじさんとは思えないチャーミングさを見せるところが良いですね。人生の先輩ぶったり、大人の男を気取ったり、気負いや格好つける素振りを一ミリも感じさせないから、小原がしょっちゅう口にする「親友」という言葉が本音に聞こえるところも素敵だなと思います。偶然を装って吉野と杏奈の助太刀に入るシーンも頼もしくて格好良かったです。

吉野に好意を持たれてると勘違いして取り乱したり、ここぞって時に腰を痛めたり、吉野の例え話が全く理解出来ず世代ギャップを感じていたり、格好悪くて情けないけど何処かチャーミングさもあって、今まであまり見たことのないキャラクターが新鮮でとても魅力的。法律のことを学びたいという吉野の言葉に大感激して「抱きしめたい」とか言って喜んでる姿も、他意はなく本当にただ純粋に嬉しくて仕方ないんだろうなって伝わってきて、ハラスメント的な感じに見えないところも良かったと思います。

強情で話の通じない佐久山相手に毅然とした態度で辛抱強く仕事に取り組む姿や、孫の事情を知った時の辛そうな表情、小型犬にもビビリまくって怯えるコミカルな姿、１話の中で色んな表情が見られて、生き生きとして人間味があって、今までのどの役よりも素敵に見えるし似合っていると思います。吉野とのしょうもない言い合いやテンポの良いやりとりが意外と年齢差を感じさせず「友情」と評しても違和感がないところも良かったです。

SNSのID交換のやり方が分からなかったり、インスタにやたら否定的だったり、良い感じにちゃんとおじさんなところが親近感湧いて良いですね。スカして格好つけてる役より人間味があって好きです。執行現場での真面目でちょっと力みや硬さを感じさせる仕事ぶりや、つい各々の事情に感情移入して表情を崩したり、仕事と割り切ってあっさりしている渋川たちとは違う不器用さがあるところも、新人らしさを感じさせて良いと思います。

キラッキラのトレンディドラマを見ていた世代なので、ちょうどよくくたびれたおじさんが似合う年になったのかと感慨深いです。ちょうどよくくたびれてくれたおかげで丸みも出てきて自虐的なセリフも似合うようになりました。卑下しすぎず直向きな小原さんらしさが出ていると思います。

山家に一目惚れしてときめいていたり、差し押さえの時も涙する山家の姿に心苦しそうだったり、山家の嘘と無断引っ越しが発覚した時には怒りで大興奮していたり、感情が表情にも挙動にも全部出てしまう分かりやすいところが小原の実直さや人間味溢れる性格を感じさせて良かったです。吉野との子供の喧嘩みたいなやりとりもテンポが良くて楽しかったです。

こんな哀愁漂う役柄を演じられる俳優さんだったんですね。くたびれた中にも矜持があって。すごく良い！

顔だけで、演技ができる。さすが。

投げられたお札を拾う中年男性ほど悲しいものはない。そこを怒りを込めながらもコミカルに動けるのは流石だと思いました。頭を下げたところを見られないように頭の位置を下げずにかがんでお札を取ったり、すっ転んだりあれだけで充分面白かったです。

小柄な吉野の後ろでさらに小さくなって犬に怯えてる姿が面白かったです。足がガクガク震えてたり、犬の気配を感じるとすぐに吉野を盾にしたり、台詞がなくて大して映っていないシーンでも、徹底して犬嫌いキャラを表現している丁寧なお芝居が良いですね。専門用語混じりの長めの説明台詞が多いですが、緩急豊かなセリフ回しと大きめな身振り手振りでメリハリをつけていて飽きさせないところもさすがだと思いました。

織田裕二ドラマ世代です。今回脇役ながら存在感があり、演技も安定していて、とてもよかった。

毅然とした態度で執行官としての仕事をこなしているけど、ふとした時に見せるやるせない表情が正義感と現実の狭間で葛藤する小原の複雑な心境を感じさせました。ひかりに犯罪者扱いされてムキになって言い過ぎてしまった時も素直に謝ったり、年下の栗橋とも冗談言い合ってしっかりコミュニケーションを取っていたり、年長者だからという気負いがなく柔軟なところも、小原の人柄を感じさせて良かったと思います。

見方によっては家の周りをウロウロする怪しい人にも見えるし、違う見方をすれば粛々と自分の仕事を全うする人にも見える。怪しいと思われても慣れっこのような感じや外仕事が多いからと思わせる浅黒さ、なんだか本物に見えてきました。