新宿野戦病院

評価が難しいなあ。リアリティは弱い。お笑い要員としてはあり。ただ笑いに寄せるとコントになってしまう。そして性的マイノリティーだからね。詰め込み過ぎて難しい役だと思う。塚地さんの芝居だけど、まず見るべきは社会的距離感。たとえばヨーコは米国人らしく、ぐいぐい距離を詰めてくる。それならトランスジェンダーなしのぶはどうなのだろう？マツコとかミッツはその距離感が極端だ。意識して見ているとしのぶはいつも中途半端な距離感なのがわかる。それって役というより塚地さん本人の気持ちの現れじゃないの？と思ってしまう。要するに詰め込み過ぎた設定を消化しきれていない印象かな。

母親が発熱しても「目の前の命を助けるのが最優先です」と毅然とした態度で仕事を続ける姿が、しのぶの看護師長としての責任感やプライドを感じさせました。１話の時には「おぉ？！」っと思った見た目やキャラクターも座り方や手の所作まで徹底した細やかな役作りのおかげですぐに馴染んで違和感なく見られるようになったし、コミカルなシーンを担当することが多かったけど、コントにならずにちゃんとドラマの芝居として成立させていたのもさすがだなと感じました。

「家に高齢者がいるんです！」とマスクをするよう皆にお願いする強い口調や必死な表情が、母を心配する娘の深い愛を感じさせて良かったです。感染させないよう家にも帰ってないって話していたし、傍で見守ることが出来ないから余計に不安が募ってナーバスになってるんだろうなって伝わってきたのも良かったと思います。

熱血リハビリを受ける母を見守っている時の表情が印象的でした。心配はもちろんだけど、生きる希望を抱いて一生懸命リハビリに励む母の姿が嬉しいんだろうなって伝わってくる穏やかな微笑みを浮かべているのがとても良かった。皆でお喋りしてる時に膝を閉じて座っていたり、缶ビールを手に持ったりマスクを整える時の丁寧な手つきなど、はっきりと映らないシーンでも手を抜かずに女性らしい所作を徹底している姿も好感が持てます。

女性用風俗店のホームページを見て盛り上がる女性陣を教訓にして、男性陣に「あんたたち、普段こういうことしてんのよ」「肝に銘じなさい！」とお説教する姿がお母さんみたいで面白かった。取り繕うことなく、ありのままの姿でお母さんとお喋りしたりリハビリに付き合う姿も、穏やかな良い表情を浮かべていてとても良かったです。

トイレで着替えている間、ウィッグをつけた時からその性別へと変化するのが見事だった。お化粧する手元も手慣れた様子で上手だった。あれだけキャストがいると目立ちたくなっちゃいそうなもんだが、浮き足だったところがないのがいい。

男性として振舞う時の口調や表情がどこか不自然というか、見た目はおじさんだけどチグハグ感があって、無理して男っぽくしてるんだなって伝わってくるのが良かったです。ヨウコたちに母について語る時の優しく労わるような口調や、穏やかさと切なさが入り混じった表情も印象的で、母への深い愛情や感謝、認知症を認めなければという苦しさや葛藤が感じられてグッとくるものがありました。

享と啓三の修羅場中に急患の様子を報告するシーン、申し訳なさと気まずさ全開の表情がしのぶの空気が読めて気遣い屋な性格を感じさせて良かった。絶対今じゃないって分かりきってるけど仕方ないっていうもどかしさが伝わってきて、そんな状況お構いなしに言い合いを続ける高峰親子とのギャップも面白かったです。ラストの花火大会で見せた姿も衝撃的で強く印象に残りました。

シンゴがマユを捜しに来た時に、中国語で毅然と対応する姿が格好良かったです。怒鳴られて肩をびくっ手させるのも可愛かった。シゲさんが救急車で運ばれる時に、「シゲさん頑張って」と大きな声でエールを送ったり祈るように手を組んで見送る姿も、しのぶの優しくて懐の深い性格や、どんな患者さんにもしっかり寄り添う看護師としての信念を感じさせて良かったです。

助産師の資格も持っていて、慌てる面々にテキパキと指示を出して出産準備を進める姿がめちゃくちゃ頼もしくて格好良かったです。「一緒に頑張るわよ」と妊婦の女の子に力強く声をかける姿も心強い。重かったり胸糞悪かったりするシーンも少なくない中、しのぶさんの人柄の良さやチャーミングさが毎回癒しになっています。

先週同様、ペヤング泥棒に悩まされてる姿が面白い。「あれは昨日のペヤング！」ってムキになったり、防犯カメラの映像をチェックして犯人捜しをしたりとかなり本気で怒っていて、しのぶさんのペヤング愛の深さが伝わってきたのも良かったし、犯人がマユだと分かった時の納得したような穏やかな顔も、しのぶさんの優しさが感じられて良かったと思います。

自分のペヤングが無くなったことをいつまでもしつこく怒ってるのが面白かったです。声が低く野太くなったりパンチを繰り出したり、仕事の時よりも本気で熱く怒っているところも、よっぽど食べるのを楽しみにしてたんだなあって伝わってきて何だか可愛らしく思えてきました。ホストの処置シーンも、ヨウコの通訳をして代わりにテキパキと周りに指示を出す姿が頼もしくて、ペヤングのくだりとのギャップがあって良かったと思います。

こういうおばちゃん普通にいそうだなってくらい似合ってるし、周りも濃いキャラ揃いだからか特に違和感もなく変に浮くこともなく、しっかり馴染んでいるところが凄い。英語の台詞も頑張ってるし、通訳したり処置室を往復して忙しそうに動き回ったり、やる気のない享たちにハッパをかけたり、仕事が出来て頼もしい姿も格好よくて、病院の縁の下の力持ち的存在なんだなって説得力があったのも良かったです。

この方の演技力について評価が高いようですが、個人的には自然な演技が好きなので、上手いと思ったことはありません。。今回も難しい役どころですが、他のドラマでもそうですが「演じてます」感がコントにしかみえませんでした。

まさかの女性役に驚きましたが、よく見るといるな！こういう人！とじわじわくる。礼儀正しさとお茶目さをいい塩梅に出しながら周囲の空気をまろやかにしてくれる、一番好きなキャラクターになっています。違和感ないってすごいわ。