東京怪奇酒

親友だと思っている人間のあまりにも意外すぎる一面に触れた時、どんな風に距離ができていくのか、それがよくわかる芝居でした。どんなに仲が良くても、決して入り込めない個人の領域があり、それはサンクチュアリのように容易に踏み込めない何かなのですね。杉野さんの狂気とも聖なる儀式とも言える怪奇酒を目の当たりにした岡山さんの当惑ぶりは、共感ともう一歩踏み込めない諦念と相反する感情を呼び起こし、とても良かったです。

今作は、「直ちゃんは小学三年生」と合同作品でしたが、唯一、杉野さん以外に「直ちゃん」からの出演者で登場していて、俳優、岡山天音としてそのままの役で難しいところですが、寧ろ控え目で常識的な感じで好感度が増しました。

嫌がる杉野を横目にのらりくらりとやり過ごしながら、ちゃっかり心霊スポットに着いてきた天音だけど、二人でへらへら怪奇酒体験ができると思っていたのに、突然、目の前に叩きつけられる恐怖に怪奇酒のリアルを感じた！心霊スポットで酒を飲むって冷静に考えたらおかしいよ、杉野。それをしっかり思い出させてくれた、天音。いつも全然怖くないのに、天音の怪奇酒は酒は美味しくないし、怖かった。