アキラとあきら

この木下ほうかさん良かったなぁ。兄へのコンプレックスで卑屈になって生きてきた階堂晋の厭らしさと哀愁を見事に演じられたいました。特に彬が社長になって追い詰められて、自分の愚かさを車の中で甥の彬に尋ねるシーンと、その後に商会の社長室で父親と兄と弟との写真を胸に抱きしめるシーンが凄く良かったです。ほうかさんの出ているドラマの中で一番この役が好きです。とにかく彬（向井理）とのシーンが秀悦でした。

嫌味なキャラクターをやらせたらこの人の右に出るものはいないのでは？というほど、嫌味な人間でした。
でも主人公からすると肉親なので憎めないし切り離せないもどかしさも感じました。
淡々とセリフを言っているようで、きちんと演技している人だと思います。

嫌味で無責任で、何でも他人のせいにしてきた晋が最終回でようやく改心しますが、その変わりようが全然違和感がなく、自然だったのが良かったです。表情がやさしくなって、刺々しかった話し方も丸くなり、彬を見つめる視線も一目置いているような、尊敬の念すら感じるものに変化していました。晋の気持ちの変化がそういった細かな表現力できちんと伝わってくる、丁寧なお芝居をされていて素晴らしかったです。

この方はドラマ『昼顔』から知りましたが、イヤミな演技は秀逸ですね。今回の兄に嫉妬する性格の悪い弟役もリアリティがあり、作品に引き込まれてしまいます。今回の『アキラとあきら』もこの人あっての作品と言えるでしょう。

狡猾な感じで父親の葬式でも相続の話をするようなゲス役が本当に似合っています。喋らなくても目の動きや口元のゆがみだけで「嫌な人物」という印象を強く残す表現力がさすがだと思います。木下さんと堀部さんがゲスいほど石丸さんの誠実さが引き立つので、ドラマのスパイスになっていると思います。