透明なゆりかご

素朴さを持ちながらも迫力ある演技に圧倒されました。
とても初々しく可愛らしいのですが、一つ一つ噛みしめるように存在感のあるセリフを丁寧に語っていく姿は
大女優そのものです。

台詞間の喋らない部分であっても、表情、目線でしっかりと演技しており、視聴者に訴えかけてきます。

今回のドラマで、はじめてその存在を知った女優さん。まだまだ若いし、ドラマもストーリーで見始めたから、主演女優さんには特に期待などももたずに観ていたが、ストーリー的には大きな存在感をもたらす役どころでもないらずなのに、その存在感が凄い。
セリフも、長いセリフ回しとかあるわけではないし、感情的なシーンが多いわけでもない。
なのに、彼女の心の声が凄く見ていて刺さる。

個人的にかなり演技がうまいと思っています。このドラマでの清原さんはとても素朴ですが、ちょっとした仕草や目の演技まできちんとできていて感情移入してしまいます。アップで顔が映るシーンが多くて、年頃ならではのニキビが目立つのですが、それもドラマの中でいい意味で生かされているような気がして、全く嫌な感じがしません。清原さん自身が自然体だからなのかもしれません。

初々しさが本当に見習いの看護師のようでとても自然です。

汚れのない純粋な雰囲気がある女優さんなので、生まれてきた赤ちゃんには喜びや感動を、生まれてこれなかった赤ちゃんには悲しみや切なさをそれぞれに演じ分けて上手に表現しているように思います。

女子高校生の目線で見る産婦人科や、その産婦人科を受診する妊婦さんやその家族、そして医師や看護師たちというのが、とても新鮮で良いと思います。演技力もあり、心の内側も想像させるような演技で、見応えがあります。

人の気持ちが分からないから、びくびくしてしまうんだなと自然と理解できる演技です。他人の感情に鈍感でも、何かしてあげたいとか役に立ちたいとかは本来持っている優しさで、嫌みの無い一生懸命さがストレートに伝わってくる。純粋ってこういうことなんだろうなと観ている側も優しい気持ちになれる。

毎回わりと深くて深刻なテーマのドラマなので、若くてキラキラした感じの所もある主人公で、良いとは思います。しかし、母性について戸惑ったりする時も、患者の妊婦さんにひどく叱られたりする時も、表情がワンパターンで乏しいと思います。辛くて仕方ない時も、悲しい時も、戸惑っている時も、どれも「怒った」様な同じ表情です。初主演という事だし、演技の勉強はまだまだこれからなのかもしれませんが、惜しい気がします。

清原果耶さんの演技は初めて拝見しましたが、すごく透明感があり、女子高生というあの時期特有の雰囲気をしっかりと体現していて、素晴らしいと思います。主人公の心情がすごく伝わってきて、毎回涙が出ます。これからどのように成長していくのか、とても楽しみです。

こちらの女優は今回のドラマで初めて知りましたが、自転車を漕ぐシーンには汗を拭く感じや坂道を登るのに苦労するところには本当に真剣なのが伝わってきてグッときました。ただ、しずしずに愛情を持ちすぎるのは高校生だから仕方ないとは言え踏み込みすぎだなとは思いました。

まだ顔つきに幼さもありますが、とても真っ直ぐな目で相手を見るその目付きがいいなと思いました。笑った顔にも純粋さが滲み出ていて、喜怒哀楽が分かりやすい表情なので、産婦人科という現場で色んな現実に直面する主人公の顔つきが出ていていいと思います。

初主演のためか、演技がかたい感じもあるのですが、それが役柄とマッチしていい味を出していると思います。静かに涙を流すときの表情や、自分の気持ちを押し殺そうとしているときの我慢している雰囲気などがとてもシーンに見合った演技で、共感しやすいです。

とてもシリアスでデリケートな場面が多いのですが、清原さんのピュアで真っ直ぐな眼差しが役柄にぴったりあっていると思います。小さなビンの中身に想いを寄せるときの何とも言えない表情がとても良かったです。かと思えば、家庭でのシーンではリラックスしていてごくごく普通の高校生のようで、しかしバイトで経験してきたことを思いながら自分の母親に接する時の態度がとてもリアルでした。