100万回 言えばよかった

井上真央さんらしい芝居だったと思います。見えないけれど直木が近くにいるとわかっている時と、それがわかっていない時、そして彼がいないとわかっている時という三つのシチュエーションを、うまく使い分けていたし、表現力も見事でした。直木を殺された激しい怒りと悲しみ、それに続く執着と混乱、そして事件の解決と共に彼への愛情は愛情として、自分を見つめる落ち着きと、しっかりと段階を踏んだ演技は見事だったし、心を揺さぶるものがありました。彼女でなければもっとメロウすぎたり、クールすぎたり、うるさすぎたり、バランスがわるかっただろうと思います。

なんて美しいキス顔でしょうか。直木の口笛の方向に顔を向け唇を差し出す顔がとても美しかった。切ないシーンでもあるけれど、なぜかゆいは満たされたような笑顔。見えないけれど直木への愛情と直木からの愛情でいっぱいなんだろうなと思った。

もう魚住さんが通訳しなくても直木が言いそうなことが分かってきたと微笑むゆい。そんな大きな愛を見せられたらそばにいる人は惚れてしまうだろうね。亡くなった直木を心に住まわせているからそんな穏やかな顔ができるのかなと思います。

直木のお父さんに会ってもお母さんに会っても責めることなく真実を受け止めて、直木に精一杯の愛情を伝えたところに感動しました。真摯に向き合う姿にゆいちゃんの真面目さと全てを受け止める心の大きさが表れていたと思います。

大きな目に見つめられると落ちない男性はいないだろうな。そして作ったものをあんなに美味しそうな顔で食べられたら惚れてしまうのも当たり前かな。あざとくなくナオキとも親友や恋人より兄妹に近い距離感。そこからグッと近づく時の色気が堪らない。