9ボーダー

八海の口から立花の名前が出るたびに反応したり、今どういう関係なのか確認しちゃったり、兄貴分としてではないだろうなっていう八海への気持ちの変化が、表情や遠慮がちに探るような口調から伝わってくるのが良かった。「赤ちゃんかよ」と鼻を拭かれた時の照れ臭そうな苦笑いや、クリスマスプレゼントを渡す時のやりとり、ケーキの苺を取り合うじゃれ合い、八海とのシーンがどれもすごく楽しそうな良い顔をしていて、見ているこちらも自然と笑顔になってしまうほのぼのとした可愛らしさがあったのも、この二人らしくて良かったと思います。

いつも七苗を後ろから見つめていることが多い陽太。七苗がコウタロウさんといい感じの時、そっと見守っているところがいじらしい。気がつくといつも七苗を目で追ってなにかやれることがないか探しているように見える。こんな人がそばにいたらいいよねー。

七苗をおんぶするシーン、良かったなあ。好きって気持ちはちゃんと認めつつも弱ってるところに付け込むことはせず「きっと一番の親友」って気持ちにちゃんと区切りをつけてるところが格好良い。それが強がりではなく心からの言葉だって感じられる穏やかですっきりした表情も良かったです。

自治会長の告白を聞いている時の軽蔑するような眼差しや、胸ぐら掴んでブチ切れる姿が、陽太の真っすぐさや正義感の強さ、コウタロウを友人として大切に思う気持ちを感じさせて良かったです。恋敵のためにあそこまで本気で怒れるなんてホント良いヤツだなあって再認識したし、それを偽善者や単なるお人好しに見せない自然な演技もとても素敵だなと思いました。

新生おおば湯が上手くいくか不安がる七苗を「何とかなるだろ」と励ますシーン、口調は軽いけど七苗なら絶対上手くいく、大丈夫という信頼が伝わってきて良かったです。「七苗はやせ我慢得意だから」とコウタロウに語る時の嬉しそうな愛しそうな優しい笑顔も印象的で、七苗のことがすごく大切な存在なんだなと彼女を想う気持ちが滲み出ていて良かったと思います。

おおば湯の今後のことで揉める３姉妹と五郎の間に立ってとりなしたり、九吾を気にかけて家に泊めてあげたり、「一人でやっていきたいなら人に頼れ」とアドバイスしたり、陽太の面倒見の良さや優しさが沢山見られたのが良かった。そこに押しつけがましさや説教臭さがなくて、サラっとさりげなくて程よい距離感があり、でも信頼出来そうな温かさもあって、あんなに頑なだった九吾が心を開く説得力があったのも良かったです。

八海と一緒にいる時の遠慮のない空気感やテンポの良い会話が見ていて心地が良いです。「心配だから夜フラフラすんな」と注意する時の口調や、八海の顔を見てフッと笑みをこぼす姿などに少しも色を感じさせず、良きお兄ちゃんって感じで健全さ全開なところも上手いなと思います。恋敵であるコウタロウのことを「良いヤツだな」と悔しさ混じりながらちゃんと認めているところも、陽太の性格の良さや素直さが感じられて良かったです。

コウタロウにビシっと正論をぶつけるシーン、格好良かったです。嫉妬っていうよりも七苗のことが心配で仕方ないっていう気持ちが全面に出ているところも、七苗のことが本当に大切で、自分の気持ちより彼女の幸せが最優先なんだなって想いの深さが感じられるところも素敵。「余計なこと言ったかな」と後で反省しているところや、限定ビールを持って謝りに行くところも、陽太の優しい性格や人柄の良さが滲み出ていて良かったです。

七苗の「コウタロウさんは訳あり」という言葉に分かりやすく目が泳ぐ姿が、陽太の素直さや嘘がつけない真っすぐさを感じさせて良かったです。七苗とコウタロウのキスを目撃してしまった時の反応も、ほぼ後ろ姿しか映っていなかったけど、わざと明るく振舞う声音や寂しげな背中から、ショックの大きさや切なさ、七苗への想いの深さが伝わってきて良かったと思います。

七苗とコウタロウの仲良さげな姿を複雑そうな表情で見ていたり、「好きって何だろう」という話になった時にチラっと七苗に視線を送ったり、会話を交わしていなくても彼女への想いが伝わってくる丁寧な演技が良いですね。自分の気持ちを成就させたいというよりも、七苗の幸せを一番に願っているような控えめな想い方も素敵。結婚お断りの件で全く役に立たないところや、膝を抱えて「かたじけない」と反省している姿もチャーミングで良かったです。

七苗を見た瞬間、嬉しそうな顔になったり、七苗の様子のおかしさにすぐ気付いてピンチを救ったり、ただお喋りしてるだけで幸せそうな笑顔を浮かべていたり、何の説明がなくても彼女に片思いしているのがしっかり伝わってくる演技が良かったです。八海への良きお兄ちゃんっぷりも彼女のことを妹のように思っているのが伝わってきて、八海の片思いをより切なく感じさせるところも良かったと思います