アトムの童

誇張しすぎで芝居が臭い。でもそれだけならまだいい。怒鳴るシーンは、ただ大声でつば飛ばしてがなり立てるだけ。素人さんかと思った。海に、アトム差し押さえの話をするシーン、彼の演技がもっと上手ければ、もっと感情移入できたのに。

最後までどうしようもないクズだったけど、分かりやすい海のトラップに簡単に引っかかったり、裏切りがバレた後もひたすら走って逃げまわった揚句、初対面の結衣に捕まるという何とも間抜けな幕引きで、そこが小者っぽい小山田らしくて良かったです。分かりやすく憎たらしい濃い目の演技で、そんなに出番は多くなかったけど毎回強いインパクトを残していて、ドラマの良いアクセントになっていたと思います。

伊原を訪ねた時の態度の悪さが小山田の腐った人間性を感じさせて良かったです。待たされている間イライラして膝を連打していたり、家の方が対応に出てくると瞬時に作り笑いを浮かべ、背を向けるとサッと面倒臭そうな顔に変わったり、表情も仕草もいちいちやることが小さくて感じ悪くて、何をしても「小山田がやりそうだなあ」って思える説得力があるところがさすがでした。

興津に罵倒された時のわざとらしい謝罪の仕方や、会社の対応に追われる秘書の後ろを携帯を弄りながらダルそうについて行く姿など、以前はあんなに興津に媚びてヘイコラしてたのにピンチになるとすぐ掌を返す薄情っぷりが小山田の人間の小ささやしたたかさを感じさせて良かったです。何か情報をリークしているような怪しい素振りも見せていたし、出番は短かったけど今後も油断ならない小悪党という印象を強く残していたと思います。

このオーバーで暑苦しい悪役芝居、日曜劇場見てるなあ～って気持ちになります。完全に弱者の海を得意げに攻撃する様子や、必要以上に大きな声で相手を威嚇して自分が優位であることをアピールするなど、やることなすことホント腹立たしいんだけど、どうせ後でしっぺ返しきて痛い目に合いそうだなっていう小者感が漂ってるからか、視界に入れたくないほど憎たらしいって感じにならないのが皆川さんならではの悪役だなって思います。

弱い敵キャラというのがぴったり。ある程度活躍はするだろうけど、初めから負けることは分かっているちょっとマヌケなところが見えちゃうのがこの人の持ち味なのかな。体は大きいのに小物感が出ていてちょっと面白くて憎めないな。

そのうち興津に切り捨てられそうだなって思ってたら4話でもう見限られていて気の毒だけど笑ってしまいました。興津には媚び諂うような態度なのに、鵜飼には「君の家族の人生がかかっている」とデータを消すよう脅迫するなど、立場の弱い者に強く出るところが典型的な小者で、それがよく似合う。妙に優しい口調で鵜飼に話しかけるところも弱みにつけこむ人間の厭らしさが感じられて良かったです。

いかにも芝居って感じの親身な口調や表情、興津に「お約束、覚えておいでですよね？」とお伺いを立てる時の厭らしい笑み、絵に描いたような悪いヤツっぷりがハマっています。他のドラマで見るより演技がオーバーっぽく見えるけど、周りもキャラが立っていて濃い人ばかりなので、これくらいでも浮くことなく良い存在感を示していると思います。

海に資金援助を申し出たあとの悪そうな笑顔、ザ・日曜劇場って感じで良かったです。一見人が良さそうな顔立ちと雰囲気なので、より悪だくみの表情が際立っていました。その悪になりきれなそうな雰囲気が興津に上手く利用されて終わるんだろうなっていう小者っぽさを感じさせるところも良かったと思います。