アトムの童

淡々と仕事をこなす海を心配そうに見つめていたり、「無理すんなよ」と優しく声を掛けたり、あからさまに元気づけるのではなく、さりげなくサラっと気遣う姿が井手の人柄の良さを感じさせました。精神的に疲れるシーンが多いので、井手の静かな優しさに海だけじゃなくて見ているこちらもホッとさせられます。

アトム玩具に担保の差し押さえに来た時の、気が進まなそうな居心地悪そうな様子が印象的でした。海の再出発を応援していたし、小山田の企みにも少し勘付いていたみたいだったし、力になれなかった後悔や後ろめたさのようなものが感じられました。助けはしてくれなかったし買収されてしまったけど、銀行側の人間にこういう気持ちを抱えた人間がいると分かっただけでも少し救われる気がしました。

小山田の電話を立ち聞きしていたり、何度も支店に足を運ぶ鵜飼を気遣ってあげたり、鵜飼と話をした時も海のことをいまだに気にかけてるような口ぶりだったし、今のところ良い人・良い先輩という感じでホッとします。優しそうな笑顔も気さくな態度も、相手を騙すための芝居ではなく井手の本来の姿に見える。立ち去る鵜飼を見つめる怪訝そうというか、ちょっと意味深そうな表情も印象的で、出番はすごく少ないんだけどインパクトがありました。

海に「ジョン・ドゥ」を捜すよう提案したり、そのためにはバグを見つければ良いとアドバイスしたり、海が会社を辞めたあとも一緒に飲みに行って気にかけてあげる姿が面倒見の良い先輩という雰囲気があって良かったです。嫌味な人や途中で裏切る役が多い俳優さんという印象があるので、単なる良き先輩で終わる気がしないし、またそういう憎たらしい演技がとてもハマるので、今後豹変する姿にも期待しています。