グレイトギフト

「自分の命と患者の命、どっちが大事なの？」と元も子もないこと言い出したり、妻を殺された直後の郡司を労わりもせず無神経に話しかけたり、相変わらず人間らしい温かみを一切感じさせない、薄情で無神経なところが本坊らしかったです。最後までイマイチ信用しきれない雰囲気があったのも良かった。自分の武勇伝を杏梨さんに話して下さいねって久留米に頼む姿や、杏梨のこと以外は全く無関心なところなど、最終回もマイペースというか本坊らしさ全開で良かったと思います。

一番つかみどころがなく、何を考えているかわからない怖さがあるキャラでした。どこか抜けていて、杏梨を思う気持ちは本物なのでしょうが、無邪気ささえ感じるところがまさにサイコパスっぽい。だから最後に改心したのには正直驚いた。まあ不利を悟って、有利な方に動いたのかもしれないのだけど。いずれにせよ、ギフトを巡るメンバーの中で、一番トリックスター的で、変化をもたらす役割を、演じる筒井さんはうまく表現していたと思います。お見事でした。

暴走する白鳥にちょっと引いている様子や「白鳥理事長の仰る通りです」と返事する時の死んだ魚のような目が忠誠心の揺らぎを匂わせていて、終盤の佳澄との結託や白鳥暗殺計画に説得力があったのが良かった。奥野が殺された時も白鳥が権力を握った時もそうだったけど、世渡り上手というかしたたかというか、とにかく変わり身の早さが凄いし、そういうところがこの人のイマイチ信用出来ない薄情そうな雰囲気に結びついてるんだろうなあって思います。佳澄と手を組んだ理由が「白鳥を潰して杏梨さんを手に入れる」っていう一貫してブレないところも本坊らしくて良かったです。

白鳥について話していたのに「男の夢、ロマンですね」といつの間にか杏梨の話にすり替わってしみじみ語る姿が頭の中杏梨だらけの本坊らしくて笑ってしまいました。どんなに大変なことが起きて巻き込まれても、そこだけは一切ブレない愛の深さが凄い。藤巻と久留米に「もう二人は付き合ってることにしましょう」とあっけらかんと提案するところや「離婚したし自由恋愛だ」と余計な一言を口にする無神経さも本坊らしさ全開で良かったです。

白鳥や郡司などとは全然地位が違うのに背伸びして並ぼうと思っている、もしくは並べていると勘違いしているような言動がありますがいつもドタバタして雑に演じているので余計に小物感が出ていいですね。ギフトをおもちゃのように軽く扱うのも本坊ならではって感じです。

藤巻と久留米の関係を茶化したり、取引の場で久留米にお酌するよう指示したり、毒見をさせようとしたり、相変わらずデリカシーゼロで無神経なところが本坊らしくて良かったです。10人以上もギフトで殺されてるのに、いつまで経っても自覚がなくて口調や態度が他人事っぽいところも怖い。自分が知らなかった事実が判明するたびに「杏梨さんはご存じだったんですね」といちいち確認して落ち込む姿も、本坊の人間の小ささとどんな時も杏梨のことしか頭にない様子が感じられて良かったです。

自分のせいで二人も人が殺されているのに「済んだことをいちいち気にしても仕方ない」ってめちゃくちゃ他人事なところや、杏梨に沼ってる話と殺人の話を同じテンションで語る姿など、道徳心や倫理観がゼロで、それが無自覚っぽいところが郡司や白鳥とは違う怖さがあって良いですね。杏梨に手を握られただけでうっとりしているチョロくて単純なところも、杏梨に頼まれれば見境なく何でもやってしまいそうな危うさを匂わせていて良いと思います。

言っていることもやっていることも狂っているのだけれど、それを平常運転のように淡々と言ったりやったりしていることで余計に狂っている感じが倍増されていると思う。変わり身の早さもすごいとしか言いようがない。

盗聴していたこともラボからギフトを盗んだことも、それを売りさばいていたことも、いつもと同じ調子で平然と告白する姿にゾッとしました。罪悪感とか一切なく、むしろ杏梨の役に立てていると嬉しそうに誇らしげな笑顔を浮かべているところも怖すぎ。あんなに白鳥に従順だったのに、立場が危うくなるとすぐに郡司側に乗り換える切り替えの早さも、世渡り上手で薄情な本坊らしくて良かったです。

藤巻にホステスさんをお薦めしつつ「杏梨さんはダメですよ」ってしっかり釘を刺している抜かりの無さが本坊らしい。杏梨に「いつも頼りにしてます」と言われた時の「生きてきて良かったです」って返しも、本当にしみじみと嬉しそうな笑顔を浮かべて感動していて、本坊にとっては大袈裟でも何でもない、まぎれもない本心なんだろうなって伝わってきたのも良かったと思います。

杏梨と話していた藤巻に嫉妬して絡んでくるシーン、緊迫続きだった空気を良い感じに緩めてくれて良いアクセントになっていたと思います。飼い犬の名前を知ってるかとかしょうもないマウント取ってきたり、「いつかものにしてみせる」と謎の意気込みを披露したり、酔っ払ってるせいもあるけどなかなか面倒臭い絡み方をしていて、それどころじゃない藤巻との対比が面白かったです。

愛宕の家族が乗り込んで来た時のオロオロした様子や、急性心不全で済ませるよう何度も藤巻に進言する姿が、面倒事を起こしたくない、波風立てたくないという本坊の組織人らしさを感じさせて良かったです。激昂する奥野への対応も手慣れているというか、言うべきことと態度をしっかり心得ていて、腹心っぷりが伝わってくるところも良かったと思います。