もしもこの世が舞台なら、楽屋はどこにあるのだろう

一人舞台に残って自主稽古をする姿が格好良かったです。芝居と役へのひたむきな思いが伝わってきて、荒んでいた久部の心に刺さる説得力があったのも良かったし、久部の演技指導でガラっと芝居が変わるところも、トニーの役者としての勘の鋭さ、才能の開花を感じさせて印象深かったです。

伴さんから後片付けを頼まれても役者をやったから疲れているといつものように言い訳を言ったが、役者を褒められて嬉しそうに伴さんを見るところがかわいらしくて憎めない。誰だって褒められたら嬉しいものね。ピュアなところが魅力だよね。

今日は酒はダメだってパトラを迎えに来たり、怪我をした本人以上にしっかりお医者さんの助言を守っていたり、でも結局「もう少しいたい」っていうパトラのお願いを無下に出来なかったり、清々しいくらい分かりやすくパトラにベタ惚れな姿が良い。結局酔っぱらってソファで爆睡してるところも、暇さえあれば居眠りしているいつものトニーらしくて、ただ寝てるだけなのにしっかりキャラが立っていて存在感がありました。

パトラのために本番前なのに日曜大工並みの大作業で花を作ってあげたり、彼女が肉離れを起こした時の心配そうに手を握ったり、お姫様抱っこして病院に連れて行ったり、口数は少ないけどパトラへの深い愛情が伝わってくるところが良いですね。長身のアンミカさんを軽々抱きかかえる姿も惚れ惚れしました。

独特の間が次はなんと言うんだろうと耳を傾けたくなってしまう。怖そうに見えて真剣に考えているだけだったりはたまた何にも考えてなかったり、その時々の表情に見入ってしまい目が離せません。パトラが夢中なのも分かる気がします。

ライバル劇団の役者に台詞がない時どうすれば良いのかアドバイスを求める姿が可愛らしかったです。顔も佇まいも怖過ぎだからてっきり威嚇でもするのかと思ったら、めっちゃ真面目で一生懸命だし、ちゃんと「ありがとう」ってお礼言ってるし、見た目とのギャップに笑ってしまいました。

オラオラ系からの台本を聞き取れないくらいの小ささで読む恥ずかしがり屋なギャップ。そして久部が恥をかかないようにセリフを誦じて見るところまで強弱が素晴らしく見応えがありました。強さだけじゃなく弱さも出してくるのは反則です。

ほぼ聞き取れない小声過ぎる読み合わせシーンがめちゃくちゃ面白かったです。耳まで真っ赤になっていて、本当にこういうのが苦手で嫌なんだなって伝わってくる。そんなトニーがちゃんと台本を頭に入れていて、久部の悔しい気持ちを汲んで黒崎たちの前で見事な演技を披露する展開には痺れたし、男気を感じてすごく格好良かったです。

音楽を止めろって言われてスイッチを押さずに音響機械をぶっ壊して止める荒さがトニーらしくて笑ってしまいました。１話では人間の感情無さそうってだなって印象だったけど、何だかんだパトラの言うことにはちゃんと従う素直な一面や、あんなに狂暴なのにパトラの平手打ちには全く怒らない姿など、恋人に見せる別の顔が垣間見れたのも親近感が沸いて良かったと思います。

スマートに現れて声も静か、それが急に瓶を割ったりするんだよね。その急変する態度に震え上がる。緩急がよくて人がどうしたら怖がるかを熟知している動きがさすがだなと思った。リカには敬語だったりと、あくまでビジネスとして怖がらせているスタンスが見えました。

目つきも佇まいも殺気立ってるというか、大声で恫喝するわけじゃないし、むしろ寡黙な印象なのに、やたら怖くて用心棒の説得力がありました。テーブルに鞄を置いたり本を積み上げたり、何でもない仕草がいちいち荒っぽくて乱暴なところもトニーの気性の荒さや血の気の多さが感じられて良かったです。