シェフは名探偵

父親との再会の時の少し硬い表情。そして懐かしい料理を食べてもらって「パ・マル」と言ってもらった時の嬉しそうな表情。久しぶりに料理を作る父の背中を思い出のスツールに腰かけて眺める少年のような表情。三舟シェフにも幸せな和解の時間が訪れたことがわかって。父を送り出すときの顔が今まで以上に明るかったのが印象的でした。

父親と再会して本音で語り合うシーンがとても良かったです。いつもより低めの声と少し淡々と素っ気なく聞こえる話し方が素っぽくて親子らしさがあり、これまで感じてきた気持ちを一つ一つ噛みしめるように語る姿が印象的でした。「パ・マル。素晴らしい」と父親に料理を褒められた時のパッと目を見開く嬉しそうな表情や、一緒に厨房に立つ楽しげな姿も素敵で、ハッピーエンドに相応しいほっこり幸せな気分にさせてもらえました。

どこか楽しそうに演じている様子が感じられます。西島さん自身は料理をあまりされないのか、あえて手元は映さない演出だったので、シェフという雰囲気は弱めでしたが、いかにも客商売らしい柔らかさを感じさせる演技はさすがです。父との対面シーンでは最初ちょっと固く突き放したように、そして自ら歩み寄るように変化していく表現が素晴らしかったと思います。

父親が自分に会うつもりはないと知った時の何とも言えない表情が印象的でした。ショックを受けている感じもするし、こういう結果になることを予想していたような落ち着きもあるし、複雑な感情が入り混じっていて切なくなりました。そんな状態でも安倍の立場を慮って気遣ったり、空気が重たくならないように明るい声でケーキを勧めたり、周りへの心配りを忘れないところが三舟の人柄の良さを感じさせ、志村たちが父親の対応に憤ったり心配したりと、皆に慕われる説得力があったのも良かったと思います。

普段の明るく飄々とした感じと、父親との思い出を語る時の少し寂しげで陰のある姿のギャップが良いですね。父親が生きていると知った時のちょっと強張ったような緊張を感じさせる表情も、ただならぬ親子関係を思わせました。誤解を解いて仲直りした嗣麻子と遥香を見つめる優しくて温かな笑顔も素敵でした。

体調の悪い西田さんが美味しそうにスープを飲む姿を見た時のホッと安心したような嬉しそうな笑顔が良かったです。お客様一人一人と丁寧に向き合う三舟シェフの料理人としての姿勢が垣間見れた気がしました。高築が撮影した動画を見ている時の、彼の本音に初めて触れてグッときているような何とも言えない表情もパ・マルを家族のように思っている三舟シェフらしくて良かったと思います。

お店に戻ってきた金子を優しく迎える姿がとても素敵でした。全てを受け止めてくれそうな包容力と温かさがパ・マルのお父さんみたいですね。こういうしっとり落ち着いたシーンも三舟の人柄の良さが滲み出ていてほっこりするし、推理している時の生き生き楽しそうな少年みたいな顔、お客様の異変に気付いた時のハッと目を見張るコミカルな表情など、1話の中で毎回色んな顔を見せてくれるところも魅力だなと感じます。

三舟のポンコツ部分と芯が通ってる部分の両方が混在している雰囲気がとても伝わってきます。人の心の機微を掴めるところは見ていてとってもかっこいいと思います。トランスジェンダーの揺れる気持ちを「マカロンはマカロンなのに」と表したのは絶妙だったと思います。

いつも穏やかで飄々としていて何考えてるか分からない人だけど、今回はお客様を馬鹿にしたような南野の陰湿さに本気で怒ったり、父親の失踪について語る時に陰のある表情を見せたり、感情的になるシーンが多かったのが新鮮で印象に残りました。常にお客様に対して誠実であろうとする姿もシェフとしてのプライドを感じさせて格好良かったです。

名探偵というよりも、三舟シェフは人を見る目や洞察力がずば抜けた人という感じ。こういう人が実際に友人知人にいたら、何もかも瞬時に見抜かれてちょっとコワいかも。
私生活の匂いが全くしない人だけど、いったいいつからそんなに鋭い観察眼を身につけたのかとか、プライベートではどんな日常を送ってるのかが気になるわ。

三舟は常に淡々としゃべっているので、相当失礼なことを言っているのに、なぜか怒れない空気にしてしまう、独特な魅力を持っていると思います。お節介で勝手に客を詮索しまくる態度は、シェフとしてどうなの？とたまに突っ込みたくなりますが、それ以上に彼の作る料理を食べてみたいと思わせるくらい、料理を作っている姿がイケメンでつい見惚れてしまいます。

ずば抜けた観察眼ですべてお見通し！みたいな三舟シェフだけど、同業者の新城さんに恋のベクトルを向けられたら一瞬、怯みましたね。でももしプロポーズした恋人がいなかったら、交際OKしたのかな。いや、やっぱり何か理由を付けてお断りしてたかな。三舟シェフ、モテそうだもんね。謎に包まれてるけど。

いつも通り飄々とした感じで推理を披露していたのに、いきなり真顔で「君は魅力的だから」ってサラっと口にするギャップが格好良かったです。新城に告白されて心底びっくりした顔してたり、自分から振っておいてダメージ強すぎて料理失敗しまくったり、他人のことはよく分かってスマートに対応出来るのに自分のことになると全然ダメな不器用さも人間味があって良かったです。

原作のコミックを読んだことがあるので、見た目が全然近くないことに少し驚いたのですが、いざ動いて話している姿を見たら違和感ゼロ。さすが名優、と脱帽させられました。料理をしている姿が本当にきれいでずっと見ていたくなります。

何かに気付いた時のハッと目を剥く表情と効果音のセットが面白いです。何度もしていたし、毎回お決まりなのかな。ここが事件解決のポイントなんだなって分かりやすくて良いですね。コミカルかと思いきや、上原がやって来た時にサッと椅子を引いてスマートにエスコートするなどちゃんと格好良さもあって、そのバランスが絶妙な良いキャラクターだなと思います。何でもドンと受け止めてくれそうな包容力もあり、大島がつい話を聞いてもらいたくなる展開にも説得力がありました。

淡々と仕事をしていそうで、周りをよく観察していて、ニコニコしながらお客様に対してお節介すぎる感じがどれも嫌みなく、変質的でもなく、それでいて上手く融和していて本当にそんな人がいるのかもと錯覚してしまう。どれも相手を思ったお節介なのがとても心和む。

気さくで穏やかだけど、何を考えているか分からないミステリアスさもあって、ちょっと掴みどころがない雰囲気がよく出ていたと思います。シェフ姿も調理シーンも格好良かったですし、クレームをつけられても「貴重なご意見ありがとうございます」と真摯に受け止める姿も、シェフとしてお客様に最高のものをという信念と向上心が感じられて素敵でした。お節介なんだけど、言葉一つ一つが説教臭く聞こえないところも良かったです。