しあわせな結婚

レオに部屋を漁っていないか尋ねられた時の「バカタレが」という台詞が妙に刺さってしまった。レオが無事に帰宅した安堵やまた一緒に時を過ごせている嬉しさ、その気持ちを実感した照れ臭さなど、息子を思う愛情があの一言に込められてるように感じられてとても印象に残りました。

幸太郎に「我が家のことですまないことだ」と謝る時の申し訳なさと居たたまれなさが入り混じったような表情や、食事中にいちゃつくネルラと幸太郎を目の当たりにした時の何とも言えない眼差し、レオが引っ越すと言い出した時の寂しげな顔、台詞はもちろんだけどそれ以上に表情の演技が秀逸で、グッと引き込まれる。年齢差のあるネルラとレオ、それぞれとちゃんと親子に見えるところも凄いです。

ネルラと幸太郎に「二人で暮らしても良いんだよ」と提案するシーン、明るく振舞ってはいるけど、家を出て事件から離れた方が良いという思いと離れて暮らす寂しさ、複雑な親心が見え隠れする表情がとても良かったです。娘の幸せを願う父としての愛情だけでなく、この人にならネルラを安心して任せられるという幸太郎への深い信頼が感じ取れたのも良かったと思います。

ネルラが犯人ではないと知った時の心から安堵した表情と潤んだ目元が印象的でした。15年間、ずっと疑って心配して、その思いを心の中にそっとしまい込んで一人で抱えて生きてきたんだなあって、娘を思う父の深い愛情が感じられてグッとくるものがありました。

自分のメンツはどうでも良い、嘘をつき続けるのは辛かっただろう、彼女を傷つけたくないと自分を騙していた相手を労り気遣う姿や、訴えずに関係を断ち、慰謝料も支払うという潔さが格好良かったです。本当に彼女と普通に恋愛をしていただけなんだなあ、愛していたんだなあって想いの深さが伝わってきてちょっと切なかったです。

幸太郎にネルラの話をする時の表情が良かった。目を潤ませ声を詰まらせながら愛しそうに大切そうに語る姿が娘を思う父の複雑な心情を感じさせました。カラオケでの弾けっぷりも、幸太郎に先を越されて泣くに泣けなくなってしまう姿もチャーミングさと人間味が感じられて良かったです。

自分が話したことをテレビで丸パクリする幸太郎を見ているシーンが面白かったです。幸太郎と一緒になって小声でコメントを口にするのも、見事にテレビとシンクロしてるのもチャーミングで良かったし、「だから弁護士は嫌いなんだ」って言いつつも、声音も表情も怒るというより「仕方ないやつだなあ」って呆れが滲むような穏やかさと柔らかさがあって、家族らしい情が感じられたのも良かったと思います。

裕福な人間特有の余裕や品を醸し出しつつ、「このままでは終われん」と再起する気満々だったり、幸太郎に対しても「金をとる気か」って不機嫌になったり、会社を追われた時のことをいまだにネチネチ文句言ったり、ちょいちょい野心や狭量さを滲ませるところが人間臭くて良かったです。